男女の性別役割分業
1980年代の恋愛は、男性がリードし、女性が応じるという性別役割分業に基づいて成立していた。恋愛という概念が日本に輸入された明治期において、恋愛は社会的な役割や性別役割分業に吸収されない個人同士の親密な関係性として希求されていたが、実際に恋愛を享受するためには、社会的な役割や性別役割分業のレールに乗ることが必要になる。この矛盾は、すでに1980年代の時点で露見していたといえる。
1987年時点での平均初婚年齢は、女性が25.7歳、男性が28.4歳であった。1980年代の結婚は、恋愛から比較的近い位置にあったと言える。結婚した後、子どもを出産した女性は、7割近くが仕事をやめて専業主婦になった。多くの家庭で「男は仕事、女は家庭」という性別役割分業が敷かれていた。
そうした中で、恋愛結婚の大半を占めていた職場結婚の割合は、徐々に減少していく。社内恋愛からの社内結婚という流れが減り、職縁によるマッチングが十分に機能しなくなった結果、剝き出しの個人同士がぶつかる恋愛の自由市場に放り出される人が増えていく。
恋愛やセックスのハウツー本が刊行され、マニュアル化が進むようになった背景には、こうした変化が影響していることは間違いない。
それでも、当時の恋愛や結婚には、前述の通り一定のレールや型が存在しており、年頃の男女に対して結婚を促す社会的な圧力も健在だったため、「結婚できない」という悩みを抱えたまま中高年になる人は少数派であった。50歳時点で一度も結婚したことのない人の割合は、1980年代にはわずか3~4%台にとどまっていた。
文/坂爪真吾













