若者風ファッションの老いた派遣労働者
「USA」とプリントされたキャップ帽、メジャーリーグ風の赤と青のスタジャン、骸骨がプリントされたGパンをはいた痩せた体。ファッションは若者風だが、帽子と黒マスクを外すと、頭のはげた、頰のたるんだおじいさんが現れる。
Dさんには貯金も、人生計画もない。その日暮らしの生活を未だに送っている。服装も生活も、10代の頃のまま60代になった。
「いろんな仕事をしてきた。派遣はけっこう長くやってる」
Dさんは都内にある、家賃3万円のアパートに暮らしている。平日は朝6時に出て、今の派遣先の工場がある湾岸エリアまで電車で移動する。派遣会社は交通費を全額支給してくれない。JRのほうが早いが、私鉄のほうが節約できる。
朝7時開店の駅そばで、まずは朝食を取る。お気に入りは、春菊の天ぷらそば。食べ終わるとコンビニのイートインスペースの片隅に座って、140円のコーヒーでまったりとした時間を過ごす。服装は作業用ズボン、上着はいつものスタジャン、USAのキャップ帽。
出勤は8時半。派遣先のある湾岸エリアには、東京湾を囲むように多数の倉庫が立ち並んでいる。最寄り駅から、倉庫作業に向かう人の群れが続々と倉庫へ吸い込まれていく。
Dさんが現在派遣されているのはレンタルされたパソコンやWi-Fiのルーターなどの修理及びクリーニングを行うメンテナンス工場だ。派遣の中年女性たちと、作業服を着た社員が、ロッカールームで安全靴に履き替える。
「今日はこちらの作業をお願いします。数をたくさんこなすよりも、丁寧にキレイに、やり直しがないように」
Dさんが「カチョー」と呼ぶ、作業着姿の40代くらいの社員が、今日の業務を説明する。説明と言っても、やることはだいたい同じだ。
この日は、パソコン本体に繫ぐ、電源コードのクリーニング。しかし、これがけっこうな肉体労働なのである。












