「リアル国宝」とも称されていた鶴松

鶴松は一般家庭の出身ながら、その才能を故・中村勘三郎さんに見いだされ、10歳で部屋子となった異色の歌舞伎俳優だ。ベテラン演芸記者はこう解説する。

「勘三郎さんからは3人目のせがれのように可愛がられ、勘九郎さんや七之助さんを兄と呼ぶ中村屋のホープです。“血ではなく芸”で梨園(りえん)を生き抜くその姿は、“リアル国宝”“リアル喜久雄”とも称されています。 

容姿、声、踊り、すべてが一級品で、立ち役から女方、妖怪に至るまで何でもこなすオールマイティーな実力派。近年はフジテレビの密着番組やドラマ、バラエティ単独出演など、メディア露出も急増していました」

昨年9月に行なわれた自主公演「鶴明会」のポスター(読者提供)
昨年9月に行なわれた自主公演「鶴明会」のポスター(読者提供)

昨年9月の自主公演「鶴明会」も大盛況でチケットの売れ行きも高止まりだったという。

「特に18日の『雨乞狐』では、踊りきった直後に雨が降り出し、観客を『神がかっている』と震えさせました。 さらに今年2月には、幹部俳優昇進とともに初代・中村舞鶴への襲名も決定していた。

舞台活動と並行して早稲田にストレート合格するほどの努力家で、品行方正なイメージが強く、私自身は悪いうわさは聞いたことがないんですよ。ただ一部からは事件後に『酒にだらしない』といった噂が聞こえてきました」(同前)

事件当日の18日、浅草公会堂では異変が起きていたという。主役級の「おとく」役を務める鶴松が突如休演。代役の中村莟玉は役が未経験だったため、開演ギリギリまでリハーサルが行なわれたという。

「不可解だったのは、松竹が“体調不良”といった定型句を使わず、理由を明記せずに休演を告知したことだ。これにはファンも騒然とし、死亡説まで流れる事態にまでありました」(同前)

実際、ある歌舞伎ファンは、「通常は休演ではチケット払い戻しはないのです。ところが、今回は払い戻しがあり、それも『なにごと!』となった要素のひとつでした」と振り返る。


浅草の近隣店舗に貼られた「新春浅草歌舞伎」のポスターより

浅草の近隣店舗に貼られた「新春浅草歌舞伎」のポスターより