吃音対策から生まれた、森岡のマシンガントーク

吃音の克服法を、森岡はなんと子供の頃に自分で編み出し、試行錯誤をしながら言葉の問題を乗り越えていく。

森岡の場合、すべての音が出にくいのではなく、特定の言葉に引っかかった。そこで「出にくい言葉をあらかじめ回避できる脳の使い方を覚えた」という。

さらに「吃音が出にくいように話に集中する方法」も身につける。ただ、それを実践すると短い間に言葉を詰め込む、普通の人よりも何倍も早い話し方になった。

「大切なのは、自分の脳をスタックさせないことです。そのため独特の喋り方になりました」

森岡毅氏(写真/稲垣純也)
森岡毅氏(写真/稲垣純也)
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森岡のマシンガントークは、もともと吃音対策から生まれたものだったのだ。

「人に何かを伝えたいという欲が吃音に勝った時に、喋るという行為が優勢になったのです」

困難を前にしても、工夫を重ねて克服するマーケター森岡の諦めない姿勢の原点がここにあった。話すことが苦手だった代わりというわけではないが、小学校に通う前から数字には強かった。

おじからもらった数学パズルの本に夢中になり、前を走っているクルマのナンバープレートを使った数遊びもよくやった。4つの数字を四則演算することで、100や150など自分で決めた数を導き出すゲームである。

「0から9までの10個の数字で世界を表現できるアラビア数字を、シンプルに美しいと感じていました。私は数字にすっかり魅了され、どんな言葉よりも馴染みました」

数学的思考が、その後、森岡をして日本を代表するマーケターに押し上げる原動力となったことは、説明するまでもないだろう。「数学は世の中の因果関係や人の行動の本質を見極めるのに欠かせません」と、世界の構造を解き明かすための重要なツールとして活用している。

文/奥井 真紀子

森岡毅語録 明日は今日より強くなれる
奥井真紀子
森岡毅語録 明日は今日より強くなれる
2026/1/10
1760円(税込)
216ページ
ISBN: 978-4296002689
USJの再建に始まり、自身が立ち上げたマーケティング会社、刀では、テーマパーク、食品、金融など多彩な領域で成果を挙げ、2025年7月には悲願の「ジャングリア沖縄」開業を成し遂げた森岡毅氏。しかし、ここまでの道のりは決して平坦なものではなかった。 吃音を抱えた幼少期、自分の弱点に思い悩んだP&G時代、そして、開業初日から予期せぬトラブルに見舞われたジャングリア沖縄──。幾多の困難に直面しながらも、目標達成に向かって突き進んできた森岡氏は、何を支えとしてきたのか。森岡氏の取材を重ねてきた著者がインタビュー記録の中から、森岡氏の考え方の核心と言える「名言」を抽出し、1冊にまとめた。 「ナスビはナスビにしかならない」「自分のできることに世界を合わせる方法を考える」「『欲』こそがリーダーシップの根源」「動いているのは心であって数字じゃない」――森岡氏が発した66の名言を、「生き方」「逆境を力に」「リーダーシップ」「勝ち筋のつくり方」の4つの切り口で紹介。さらに、森岡氏の哲学を育んだ幼少期からのヒストリー、「ジャングリア沖縄」の現在地と未来への展望を語ったインタビューを収録。 就活生や新社会人、転職などで新しい環境に立ち向かう人。 仕事や人生の壁を乗り越えようと奮闘する人。 多くの人の挑戦に寄り添う珠玉の語録。
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