スティーヴィー・ワンダーから届いた2つの楽曲
そんなジェフの心を強烈に惹き付けたのが、ジャズ・ギタリストのジョン・マクラフリンだ。ちょうどその頃、ジャズはロックとの融合を始め、「クロスオーバー」「フュージョン」と呼ばれるジャンルが生まれていた。
ジョン・マクラフリン率いるマハヴィシュヌ・オーケストラの音楽は、ジェフに“ギター・インストゥルメンタル・サウンド”という一つの方向性を指し示した。
ジョージ・マーティンをプロデューサーに迎えて、1975年4月にリリースされたジェフ・ベック初のソロ・アルバム『ブロウ・バイ・ブロウ』は、かなりジャズ・フュージョン的アプローチで、全曲ギター・インストゥルメンタルのアルバムだった。にも関わらず、ビルボード・チャート4位を記録し、初のゴールド・ディスクに輝いた。
『ブロウ・バイ・ブロウ』は、まさにジェフ・ベックが新境地を切り拓いたアルバムであり、また「ギタリストのためのギター・アルバム」としても評価が高い。
そのアルバムには2曲、スティーヴィー・ワンダーの曲が収録されている。『セロニアス』と『哀しみの恋人達』だ。
『セロニアス』は、『迷信』とほぼ同じ時期に、スティーヴィーがジェフのために書き下ろした曲で、ジェフはBBAでは演奏せずにとっておいたものと思われる。
そしてもう1曲が、いまやジェフ・ベックの代表曲の一つと言っていい『哀しみの恋人達』だ。これは『迷信』の件のお詫びとして、スティーヴィーがプレゼントしたと言われているが、実はジェフのために書き下ろしたわけではなかった。
1974年のアルバム『スティーヴィー・ワンダー・プレゼンツ・シリータ』に収録されていた曲で、離婚した後もスティーヴィー・ワンダーが全面プロデュースをした元妻のシリータ・ライトのために書かれた、とてもパーソナルな歌なのである。
アルバム『ブロウ・バイ・ブロウ』の6曲目『哀しみの恋人達』には、このような付記がされている。
Dedicated to Roy Buchanan and thanks to Stevie – J.B.
憶測になるのだが、シリータのこの歌を聴いたジェフが、ぜひこの曲を弾かせてほしいと頼んだのかもしれない。そして敬愛するロイ・ブキャナン風に奏でてみたのではないか。
シリータの歌が日の目を見ることはなかったが、ジェフ・ベックの『哀しみの恋人達』は、心に残る素晴らしい名演となった。
文/阪口マサコ 編集/TAP the POP
※参考文献
「天才ギタリスト ジェフ・ベック」シンコー・ミュージック
「モータウン・ミュージック」ネルソン・ジョージ著 林ひめじ訳 早川書房
「スティーヴィ・ワ ンダー 心の愛」 ジョン・スウェンソン著 米持孝秋訳 シンコーミュージック













