公明「賛成すれば、あんたの地元の学会票はすべて立憲民に行く」
自民は都道府県議会で多くの議員を抱える。その地方議員が自民党の力の源泉だ。献金規制は彼らが干上がることを意味していたから無理難題と言えた。
そうした自民のお家事情は馬場伸幸氏や遠藤氏のような自民を出身母体とするベテランはよく分かっていた。そこで維新が企業団体献金の規制に代わって持ち出したのが衆院議員の定数1割削減だった。
だが、そんなとってつけたような「定数削減」には野党が猛反発した。
「なぜ1割削減なのか? なぜ比例区なのか。根拠がさっぱり分からない」
公明党の西田幹事長は首をかしげる。とりわけ比例削減は自民との連立を解消して小選挙区から撤退し、比例区に全集中するつもりだった公明にとっては死活問題だ。連立解消しても地方レベルで自民との選挙協力を武器に地元で自民議員に圧力をかけ始めた。
「定数削減に賛成すれば、あんたの地元の公明・創価学会票はすべて立憲民主党に行くぞ」
ある九州地方の自民議員はそういって脅されたという。
この議員の地元で公明・創価学会票は約1万5000票あるとみられる。その1万5千票が離れるだけではなく、ライバルの立憲議員に流れたら「行ってこいで3万票になる。もはや比例復活も無理だ。とてもじゃないけど逆らえない」
高市総理「何とか維新の顔を立てて欲しい」
維新の藤田共同代表が「自民はやらないで済む理由を一生懸命考えている」といら立った背景には公明党の自民への圧力があった。
時間がたつにつれて、両党の不信感が募った。その膠着状態の打開を図ったのも、この連立政権のきっかけを作った遠藤氏だった。
維新の国会対策委員長として辣腕を振るいつつ、首相補佐官として総理官邸にも部屋を持つ。財務や警察など主要官庁から秘書官も出向して脇を固めている。その遠藤氏が11月下旬、高市総理にこう告げた。
「うちの吉村も藤田も苦労している。何とか定数削減法案を前に進めて欲しい」
高市総理は鈴木幹事長に連絡してこう述べた。
「何とか維新の顔を立てて欲しい」
同時に遠藤氏は維新の執行部に「連立離脱カード」の発動も指示した。自民執行部を揺さぶって、12月5日、自民と維新は議員定数削減の法案を国会に提出した。
与野党で議論して1年以内に定数削減の方法と数を決める。1年以内に決まらなかった場合は、自動的に小選挙区25、比例区20削減するという「自動削減条項」を盛り込んだ。
だが、この自動削除条項には野党だけではなく自民党内にも猛反発があった。自民の岩屋前外務大臣は「こんな問答無用条項は論外だ」。公明の斉藤鉄夫代表は「民主主義の否定だ」と強烈な批判を浴びせた。












