「うちは企業献金で自民に譲ったんや。そこを汲んでもらわんと吉村や藤田がもたん」

12月1日。総理大臣官邸では、マリンブルーのジャケット姿の高市早苗総理と濃紺のスーツ姿の吉村洋文・日本維新の会代表(大阪府知事)が笑顔で向き合った。定数削減での合意がまとまったからだ。

トップ二人の笑顔とは裏腹に、数日前まで両党は連立離脱の危機に陥っていた。そもそも衆院議員の定数削減は、自民と維新の連立合意に含まれた項目だ。

「身を切る改革」を掲げる維新にとっては譲れないテーマで、この臨時国会で比例50削減を決めることが前提だった。ただ、すでに国会の会期は12月17日までしか残されていない。誰の目にも時間切れは明らかになり、維新は焦っていた。

日本維新の会の吉村洋文代表(日本維新の会Xより)
日本維新の会の吉村洋文代表(日本維新の会Xより)
すべての画像を見る

一方で、自民は期限を設けずに他の野党も巻き込んでの協議を主張していた。議論は平行線をたどった。一時は維新が水面下で「約束が違う。“離婚”もやむを得ない」と連立離脱をちらつかせた。

事態が動いたのは11月30日。高市総理の最側近の木原稔官房長官が沖縄視察から東京に戻ってきた夜だった。

東京・赤坂の衆院議員宿舎の会議室に自民からは木原官房長官、萩生田光一幹事長代行、維新からは藤田文武共同代表、遠藤敬総理補佐官が集まった。遠藤氏が自民側にこう訴えた。

「うちは企業献金で自民に譲ったんや。そこを汲んでもらわんと吉村や藤田がもたん。定数削減するっていう実効性の担保が必要や」

維新側は定数削減について期限を区切って実現性をもたせることに強くこだわった。今国会の成立をあきらめて、定数削減のスケジュールだけを決める「プログラム」法案に妥協する代わりに、1年後に結論を出せなかった場合は実効性の担保として「自動削減条項」の導入を求めた。

対する自民は維新が求める比例50削減には抵抗があった。公明党が猛反発していたからだ。