受診時間「19時まで」はただの慣習。診療時間の法規制はない

──不妊治療は排卵やホルモン状態を細かく確認する必要などもあり、通院回数も多くなりやすいもの。仕事との両立が難しい中で、どんな工夫をしていますか。

通いにくさから治療を中断するケースを減らすため、雨の日でも通いやすい駅直結・駅近の立地を選びました。

診療時間は22時までに拡大し、平日だけでなく土日も診療を実施。患者さんからは「妊娠してクリニックを卒業するまで、有休を取らなければならなかったのは一度きりでした」という声も届いています。

──こうした体制を実現できた理由は?

ひとつは別事業で培ってきた資金力です。立地や最新設備には積極的に投資しており、これまで全国12院の立ち上げに累計約100億円を投じてきました。もうひとつは「患者さまファースト」という一貫した理念。患者さまにとってベストな形を突き詰めれば、22時まで診療するのは当院としては当然の判断なのです。

診療は22時まで、駅直結、全国80院構想──「妊娠の切り札は技術ではなく」にしたん社長“不妊治療のインフラ”をつくる挑戦_2

──多くのクリニックが早めに診療を終えるのは、規制などがあるからでしょうか?

私もビックリしたのですが、実はまったくそうではないのです。慣習的にその時間で終えるクリニックが多いだけで、あとは「遅くまで働きたくない」という意識も影響していると思います。

医療の現場には、まだまだ患者目線の発想が欠けているのが現実です。ある関係者が「うちは患者さんが何時間待っても受けたいと思うほど人気です」と誇らしげに話すのを聞きましたが、本来は待たなくて済むほうが理想ですよね。逆に言うとまだまだ日本の医療には可能性があるなとも感じます。