「子どもは贅沢品」発言の裏で
23年、大手プロバイダーがおもにZ世代の未婚者(18〜25歳)に聞いた調査では、5割弱(45.7%)が「(子どもを)ほしくない」と答えていました(ビッグローブ「子育てに関するZ世代の意識調査」)。この調査を受けて、子育て中、あるいは子育てを終えた、上の世代と思しき人々は、「Z世代の半数が、子どもが欲しくないんだって?」「また、わがまま言っちゃって」とSNSを中心に冷笑しました。これに対し、Z世代らは次のように切り返したのです。
「子どもは贅沢品でしょ」「自分のことで精いっぱい。少子化対策に貢献する余裕はない」
確かに、若者の結婚や出産(子作り)意欲は、若者自身の生活状態や働き方(年収や正規、非正規など雇用形態)と強く相関すると言われます。24年、弊社が他社の協力を得てZ世代1600人以上に行なった定量調査(※協力:CCCマーケティング総合研究所)でも、それらは見事なまでにZ世代自身の年収や雇用形態と結びついていました。
たとえば、結婚と出産について。「どちらもしたい」の回答は、年収0〜300万円未満での4割強(44.1%)に対し、年収300万円以上では6割強(61.2%)にのぼりました。また、同じ回答を雇用形態別に見ると、非正規で4割ちょうど(40.0%)なのに対し、正規では6割弱(58.7%)。つまり、年収の高低や正規・非正規で、それぞれ結婚・出産の希望に約2割の開きがあり、この傾向は男女共にほぼ同じだったのです。
近年、結婚は「低年収や非正規だと、相手として選ばれない」可能性が上がり、近年は本人たちの「諦め」にも似た傾向が、男性だけでなく女性にも見られるようになりました。また、出産や育児にはお金がかかることも低年収層にとって大きなネックでしょう。
子育てには「幼稚園から大学卒業までに、最低でも1000万円以上の教育費がかかる」とも言われますから、低年収や非正規の若者たちは躊躇しやすいですよね。
ですが半面、出産や育児は「お金がすべて」ではないはずです。
実は弊社が行なった定量調査(※協力:CCCマーケティング総合研究所)では、あえて結婚と出産を切り離し、「結婚はしたいが子どもはいらない」と「子どもは欲しいが結婚はしたくない」にそれぞれ、YESかNOかも聞いてみました。するとこちらは、先ほどの「(結婚と出産)どちらもしたい」とは違い、年収や雇用形態との相関がほとんど確認できなかった。
すなわち(結婚せず)「子ども」だけが欲しい(平均5.0%)か、(結婚したいが)「子ども」は欲しくない(平均15.7%)かの希望は、男女共に、年収の高低や正規・非正規で、大きな違いがなかったのです。