相続争いの8割は遺産「5000万円以下」の一般家庭で起こっていた…親子で今すぐにでもしておきたい「争族」回避の準備
親が元気なうちは、なかなか切り出しにくい「お金」の話。「財産をあてにしていると思われたら…」と、つい後回しにしてしまいがちだ。しかし、親が突然倒れたり、認知症になったりしたら、俗に“争族”と言われる相続トラブルが始まることも……。しかも、トラブルになるのはお金持ちよりむしろ普通の家庭のほうが多いというから他人事ではない。
吉田肇著『介護・老後に困る前に読む本』より抜粋、再構成して、“争族”を避ける具体的な方法をお届けする。
介護・老後で困る前に読む本#3
争族を起こさないためにできること
最善の備えは、遺言書を残すことです。子どものほうから「遺言書を書いて」とはなかなか言いにくいものですが、遺言書がないばかりに子どもたちが揉めるケースが大半であるのも事実です。資産1億円以上の人が〝争族〟になる率が低いのは、資産家ほど遺言書を残しているという点もあると思います。遺言書は何度でも書き換えられますから、備えて早すぎるということはありません。親子であらかじめ対策をしておくことが、〝争族〟の回避につながります。
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資産に関することは、親子であってもざっくばらんに話しにくいものです。円滑に話を進めるには、親御さんのことばかり聞くのではなく、お子さんの資産状況も正直に親に伝えるように心がけましょう。
「親父やおふくろよりも自分が先に逝くかもしれない。自分にもしものことがあった場合、妻や子どもたちが困らないようにしたい。どうしたらいいかな?」などと相談してみるのも一案でしょう。長寿化は、裏を返せば親より子どものほうが先に亡くなる可能性もはらみますから、現実的な相談とも言えます。
「自分は今58歳で、2年後に退職金が1500万円くらい入ると思う。その中から家のローンの完済に500万円使うつもりなので、預貯金と合わせて手元に1000万円ほど残る」などと正直に明かしたうえで、「親父かおふくろが将来介護施設に入居せざるを得なくなった場合、援助できなくはないが、自分の家計から持ち出せるのは月に7万円まで」と伝える備え方もあります。
そうやって慎重に、かつ具体的に話を進めていきながら、家財整理や相続といったデリケートな話題についても親子で早めに話し合う機会を見つけていきましょう。
文/吉田肇
『介護・老後で困る前に読む本 親子で備える知恵と早期の選択で未来を変える!』(NHK出版)
吉田肇
2025/7/10
1,760円(税込)
200ページ
ISBN: 978-4140819968
「お金」「住まい」「健康」「地域とのつながり」……あなたの老後に向けた備えは大丈夫?
失敗しない将来への備えは、親子で元気なうちに話し合い、自分に合った選択をすることがベスト。
介護現場歴30年以上、介護支援専門員、認定介護福祉士、宅建士、ファイナンシャルプランナーなどの資格を有する著者が豊富な知見や事例、データをもとに、「百人百色」のさまざまな介護・老後の課題から自分にとって最適な選択へと導くための知恵や実践すべき行動から、親子で話しづらい話題をスムーズに行うコミュニケーションのヒントまで情報満載に紹介。
自分の現状を確認して、自分に合った今後の最適解を導き出せるチェックリスト付き。