パッション屋良、介護事業にも進出

「最近は老人ホームで体操のレクチャーや、レクリエーションなんかもやっています」

かつて『笑いの金メダル』(テレビ朝日系)などのバラエティ番組でピン芸人として活躍したパッション屋良は、2011年に活動拠点を地元・沖縄に移し、2017年にパーソナルトレーナーとして独立。名護と那覇でパーソナルジムを経営をしている。

「年商は2000万円ですが、店舗の家賃に毎月50万円くらいはかかっていますし、光熱費も人件費もあります。収入で言ったら、もうびっくりするぐらい低いですよ。生活は結構、ギリギリです(笑)。みなさんもそうだったと思いますが、コロナ禍はやっぱり大変でした。今は落ち着いてはいますが、それでも仕事の波はやっぱりありますね」

『月曜から夜ふかし』でおなじみの嫁ニーを指導する様子 (写真/本人提供)
『月曜から夜ふかし』でおなじみの嫁ニーを指導する様子 (写真/本人提供)
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この仕事でもっと何かできないか――。3年ほど前、パッション屋良がそんなふう考えていると、あるジム会員から提案を受けた。

「その方は老人介護事業をやられている方で『じゃあ、ウチの老人ホームで何かやってよ』と。『じゃあ、お手伝いさせていただきます』という流れになりました。僕が訪問しているところは、重度の認知症の方が多いんです。寝たきりの方もいらっしゃいます」

初めての訪問時には『老人ホームで体操を教えるときは、壁に向かっているつもりで淡々とやってね』と言われたという。

「要は『無反応』ということです。通常の芸人の営業とは違って『リアクションはないけど、心折れないでね』というアドバイスでした。それを聞いて、僕は逆に『おお!』ってなりました」

むしろ前向きに捉えられたのは、なぜだろうか?

「僕はお笑い芸人として活動を始めた最初、何者でもない状態で、パッション屋良という名前すら覚えてもらっていない中で営業をしてきました。『全然誰も笑ってくれない』『あれ、僕のことは見えているのに、僕の声は聞こえていないのかな?』みたいな。

なんだか、その営業の状況とすごく似ていると思ったんです。その中で、自分のパフォーマンスを『やりきる』。お客さんが見ていようがいまいが、伝わっていようがいまいが。やりきる力はとても必要だし、自分にマッチしていると思いました」

老人介護施設で、屋良が体操の呼びかけをしても、やる人もいれば、やらない人もいる。心が折れそうになることも、やはりあるという。

介護施設でシニアにもできる運動を指導するパッション屋良 (写真/本人提供)
介護施設でシニアにもできる運動を指導するパッション屋良 (写真/本人提供)

「でも、どうせやるなら楽しくやらなきゃ損じゃないですか。営業の30分でも『うわ、きっつ、スベってる』と思いながらやり過ごすのか、『全然僕の話聞いてないけど、楽しい!』と思って取り組むのか。

それによってパフォーマンスは変わってくる。事務所(マセキ芸能社)の兄さんであるウッチャンナンチャンさんも若いころ、スベっている舞台ではアドリブを入れまくって、楽しく営業をしていたと聞いたこともあるんですよね」