「じゃあ、もし1位になったら僕のライヴに出演してよ」

「誰もがそれを信じられなかったくらい、本当に感動的な夜だった」

1974年11月28日にマジソン・スクエア・ガーデンで開催された自身のコンサートについて、エルトン・ジョンはそう振り返った。

ジョン・レノンがアンコールに参加してくれて、一緒に3曲も演奏してくれたのだから無理もない。

その発端となったのは、ジョン・レノンとの間でちょっとした軽いやり取りがあったからだ。

アルバム『心の壁、愛の橋(Walls and Bridges)』を制作していたジョンがいるスタジオを、エルトンが訪ねたのは1973年9月のことだった。

『Walls And Bridges』はジョン・レノンの70年代最後のオリジナル・スタジオ・アルバムだ。写真は『Walls And Bridges [輸入盤]』(2015年8月21日発売、UNIVERSAL MUSIC JAPAN)のジャケット
『Walls And Bridges』はジョン・レノンの70年代最後のオリジナル・スタジオ・アルバムだ。写真は『Walls And Bridges [輸入盤]』(2015年8月21日発売、UNIVERSAL MUSIC JAPAN)のジャケット
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エルトンはその時、レコーディング中だった「真夜中を突っ走れ(Whatever Gets You Thru the Night)」を聴いて、ピアノを加えたらどうかと提案した。

ジョンがそのアイデアを喜んで受け入れてくれたので、エルトンはピアノとオルガンを弾いただけでなく、ヴォーカルもデュエットすることになった。

出来上がりを聴いたエルトンは、その場で「シングルにしたら絶対1位になるよ」と進言した。

『真夜中を突っ走れ』も収録されているアルバム『レノン・レジェンド』(2004年11月17日発売、UNIVERSAL MUSIC JAPAN)のジャケット
『真夜中を突っ走れ』も収録されているアルバム『レノン・レジェンド』(2004年11月17日発売、UNIVERSAL MUSIC JAPAN)のジャケット

だが、ジョンはまるで取り合わずにこう言った。

「100万年かかっても、この曲が1位になることはありえないね」

そこでエルトンは、ジョンに一つの提案をした。

「じゃあ、もし1位になったら僕のライヴに出演してよ」

ソロになって以来、ライヴを避けてきたジョンは、この時はあっさり「OK」と返答した。その場のノリで軽く言っただけなのかもしれない。