性犯罪は裁判にすべきではない!?

前の事情聴取から1か月ほど経過した頃、警察からこれまでの捜査の説明と今後について相談をしたい、という連絡がありました。そこで私は、お母さん、都民センター相談員2人と一緒に警察署に行き、いつもの男性警察官とその上司に会いました。娘さんには負担が大きいと思われたことから、その日は参加しませんでした。

上司の説明によると、私が娘さんたちと警察署に同行したあと、警察は令状を取って加害者宅を捜索し、携帯電話やパソコンなどを押収していました。画像が消去されていたので復元作業を行い、さらにメーカーに依頼して検証し、画像解析して被害時期の特定を試みたとのことでした。

お母さん、都民センター相談員に席を外してもらい、私だけが画像を見ました。まだあどけない顔の娘さんのさまざまな性的画像が撮られていました。どうしてこんな酷いことができるのだろうか。物心ついてから、娘さんはどう感じていたのだろうか。

私は、これは絶対に許されない、画像という決定的な客観証拠があるのだから、なんとしても立件にこぎつけなければ娘さんは被害回復できないと思い、立件に向けてできることは何でもしよう、と固く決意しました。

上司の説明では、それらの画像は全て時効にかかっている、とのことでした。写真が撮られた日の日付を教えてくれましたが、最初にお母さんがハートさん(性犯罪被害相談ダイヤル「#8103」)に電話した時点で適切なアドバイスがなされて捜査が開始されていれば、全て間に合ったはずでした。

私は諦めてはいけないと思い、娘さんはPTSDを発症しているのだから、強制わいせつ致傷罪で立件すれば時効にかからないではないか、と強く訴えました。

すると、年配の男性警察官が「性犯罪なんて裁判にすべきじゃない!」と私に向かって怒鳴ったのです。弁護士相手ですらその態度ですから、お母さんや娘さんに対しては、どれだけ失礼な態度を取ったことでしょうか。

写真はイメージです 写真/Shutterstock
写真はイメージです 写真/Shutterstock

性被害に関する警察の姿勢はかなり改善されているのに、都内の警察署でまだこんなことが起きているんだ……。私は怒りというより、頭がスーッと冷えていくような感覚に襲われました。そういうことか。性犯罪が嫌いで、捜査したくない人がいるんだな。上司のほうが年下で遠慮している様子だったので、この人を担当から外さないことには絶対に立件できない。

そこで私は、警視庁捜査一課で担当してもらえないか、と、さまざまな伝手を使って働きかけました。

しかし、この状況を訴えても「きちんと指導します」「ご事情は了解しました」などと言われるのみで適切な捜査がなされている様子はなく、私が提案した意見はことごとく否定され、娘さんのPTSDの状態は悪化する一方でした。

私は、事件とPTSDの因果関係を立証するため、精神科医に会いに行ったり、判例を調べたりしましたが、「これだ!」という決め手がなく、結局事件が潰されるのではないかと、焦る気持ちを募らせていました。