過去3度ほど利用したことがあるシアターで起きた
中嶋涼子さんは無類の映画好きだ。ほぼ毎週映画館に出かけるという彼女の前職は、映画の編集。件の映画館「イオンシネマ シアタス調布」に出かけたのも、このときが初めてではない。
上映する映画によってシアターの設備は異なるが、その日、中嶋さんが観たかった『52ヘルツのクジラたち』はリクライニング可能な革張りシートが備えられた「グランシアター」のみで上映していた。過去に3度ほど「グランシアター」を利用したことがあったため、この日もスタッフに介助をお願いした。
「介助を申し出るときはいつも『お手数をかけてしまうな』と思いながら、でも映画を楽しみたいので、スタッフの方にお願いするようにしています。3段くらいの階段があるシアタールームなので、どうしても車椅子では行くことができないんです。
その日も、普段通りに4名のスタッフの方にお手伝いをしていただき、映画鑑賞をすることができました。ところが映画が終わると、スタッフさんたちとともに、服装の異なる社員さんがお見えになりました。おそらく、役職に就かれている方ではないかとお見受けしました」(中嶋さん、以下同)
介助が終わったあと、そのスタッフは中嶋さんに対して「今後はこのスクリーン以外で観てもらえると、お互いにいい気分でいられると思います」という主旨を伝えたという。この一言に一瞬、中嶋さんは思考が停止してしまう。これまで複数回にわたって応じてもらえたことが、遠回しに拒否される形になったからだ。
「一番よくわからなかったのは、『これまでも介助をしていただいたのですが』と伝えても、『そのような事実はありません』とおっしゃるんです。帰り道、入場拒否をされたのだと感じて、悲しい気持ちになってしまって……。それでXに書き込みをしました」
書き込みは瞬く間に多くの人が目にするところとなり、「イオンシネマ 車椅子」がXのトレンドに登場。
当初は弱者としての中嶋さんに同情的な意見が多く寄せられたが、過去の中嶋さんのYouTubeチャンネル動画などが取り沙汰されるにつれ、誹謗中傷が目立つようになった。動画のなかの中嶋さんは明るく快活で、一般にイメージされる障がい者の枠組みとやや異なったからかもしれない。
「新幹線で移動する際、車椅子が入れる個室を予約するのですが、その個室内で撮影した動画を見つけた人が『トイレのなかで撮影して非常識』みたいな切り抜き方をして拡散されたことがありました。もちろん誤解なのですが、そうした積み重ねによって、徐々に批判コメントが増えてきてしまって……。
『死ね』『殺しに行く』などのメッセージが届くようになりました。警察に被害届を出し、逮捕者が出るに至るまでになりました。
また、インフルエンサーとして活動しているのでファンレターの宛先として公開していた住所には、頼んだ覚えのない出前が届いたりもしました」













