「現実の世界は危険な場所じゃなかった」
こうした経緯から、外に出たら誰かが殺しに来るのではないか――これまで天真爛漫に過ごしてきた中嶋さんは、恐怖に怯えるようになった。3日ほど自宅から一切出られずにいた彼女は、それを見かねた友人によって連れ出された。
外出してみれば、これまで通りエレベーターのドアを押さえて待ってくれる人もいた。「SNSだけをみて怯えていたけど、現実の世界は危険な場所じゃなかった」と中嶋さんは当時の安堵を振り返る。
上映後の一件から1週間ほどして、中嶋さんはイオンシネマに連絡を取った。先方もまた、お詫びをするために中嶋さんを探していたという。支配人が数名の社員を引き連れて自宅を訪れた。その際、解けた誤解もあった。
「映画が始まる前の介助において、スタッフさんのおひとりが、車椅子を持つことに危険を感じたようです。それを上司に伝えて、事故の危険の恐れがあることは今後難しいという方向になったらしいのです。
そして『これまで介助した記録がない』という先方の主張については、単純な認識の誤りで、履歴をさかのぼると私が利用したことがわかったとのことでした。
先方からは丁寧に謝罪をしていただきました。また私も、スタッフさんに怖い思いをさせてしまったことを謝罪し、気が付かずにいた点について意見交換ができました。
私は今回の書き込みによって、何より私が大好きな映画を上映している映画館に迷惑がかかっていることも気になっていました。こうして誠実に対応していただけたことをうれしく思っています。もっとも、後日談としてきちんとSNSに書いたのですが、炎上のときに比べてまったく話題にはなりませんでしたが……」
もうひとつ、中嶋さんが映画館の対応で誠意を感じた部分があるという。
「事件から半年して、同じ映画館の同じシアターに映画を観に行ったときのことです。当時はなかったスロープと車椅子用の席が、入口に設置されていました。映画館の方たちが自宅にいらしたとき、『バリアフリーを充実させていきたい』とおっしゃっていたことが、こんなに早く実現されたことに感動しました」













