蓄積される行動や検索の履歴
検索エンジンやSNS、動画共有サイトなど、多くのプラットフォームは広告モデルによってその収益を上げている。その中でも代表的な商品が、「行動ターゲティング広告」とよばれる広告商品である。
行動ターゲティング広告とは、ユーザーがプラットフォームを利用した行動履歴(クリックや閲覧、購買などのアクションの履歴)をパラメーターとして、そのユーザーがコンバージョン(購買)する確率の高い商品やサービスの傾向を推測し、それらの「ターゲティングされた」広告を広告主企業に販売し、それをアルゴリズムによって表示する仕掛けのことである。
レコメンドやリターゲティングのアルゴリズムを、コンテンツの選別だけでなく、広告配信にも応用したものだ。
もともとレコメンドやリターゲティングは、アマゾンのようなECのプラットフォーム内において、ユーザーの検索履歴や閲覧履歴などに従って商品を選別し、よりコンバージョン・レート(サイトに訪れたユーザーが購買などの行動変容にいたる割合)が高くなるように最適化する手法であった。
行動ターゲティング広告においては、同一のプラットフォーム内での広告表示に加えて、外部のウェブサイト上にもこのようなレコメンドやリターゲティングに基づく広告を表示することが特徴的である。
たとえば、グーグルの検索エンジンで、ある商品に関するキーワードで検索し、その結果を確認した後、他のウェブサイトに移動した際に、その商品に関する広告が表示されたりする。
あるいは、アマゾンでチェックしていた商品が、他のニュースサイトなどを閲覧している際に広告として表示されたりする。近年ではこのような広告がかなり一般化しているため、驚く人は少ないかもしれないが、これらはすべて行動ターゲティング広告である。
しかし、グーグルで検索したものや、アマゾンでチェックした商品が、なぜ無関係なニュースサイトやブログ記事などをみている際に特定されてレコメンドされるのか、考えてみたことはあるだろうか。
そこになんらかのアルゴリズムが動作しているとして、そのアルゴリズムは誰が設定し、そのパラメーターとなる自分自身の行動履歴はどこで収集・蓄積されているのだろうか。
これらは「アドネットワーク」とよばれる、表面上のインターネットサービスとは別のプラットフォームによって実現されている。実際にアドネットワークを運営しているのも、グーグルやメタなどのプラットフォーム企業である。
グーグルは検索エンジンの最大手であると同時に、ウェブ上のアドネットワークの最大手でもある。メタはフェイスブックやインスタグラムを運営するSNS事業者であると同時に、スマートフォンアプリ上のアドネットワークの最大手でもある。
これらのプラットフォーム企業の広告収益においては、自社が展開しているサービスだけでなく、アドネットワークという広告プラットフォームからの収益もかなり大きなものになっている。













