「インフレ・デノミの巻」(ジャンプ・コミックス第191巻収録)

今回は、「景気上昇させるなら、まずはわしの給料を上げろ!」と主張する両さんが、極端なインフレを実体験するお話をお届けする。

本作が発表されたのは、2013年。第二次安倍内閣を率いる安倍晋三首相によって、金融緩和と財政出動、成長戦略の「3本の矢」による経済政策「アベノミクス」が行われている真っ最中に発表された。作中では、戦後の復興にはじまる日本経済の推移と現状を、非常に分かりやすく紹介している。

これを「週刊少年ジャンプ」誌上で描くのもすごいのだが……インフレ政策が実践されたときに起こりうる現象を、きっちりと笑いたっぷりに描いてみせたところが、やはり『こち亀』の真骨頂だろう。

長い低迷・底なしの下降を感じ続けていたこの数年から、日本経済復興のわずかな光明が見え隠れしはじめているようにも思え、しかし物価の激しい上昇に所得の上昇が全然追いついていない……といった状況の「今」読んでみると、改めて興味深いエピソードだ。

1970年代のオイルショック(石油油の供給逼迫および原油価格の高騰による経済の混乱)による景気停滞期から、1980年代のハイテク産業を中心とした輸出拡大による好景気とその揺り返し、1980年代後半の金融緩和によって生まれたバブル景気による狂乱の時期と、その失敗や産業構造の空洞化、中国などの圧倒的な経済成長による長く続く停滞・後退……。

『こち亀』は日本の経済、というか、日本の日常に寄り添って描かれてきた作品だ。この先、作中でどんな我々の生活が描かれていくことになるのだろうか。

それでは次のページから、両さんと本田の超インフレ体験を描いた一作をお楽しみください!!