選別されるのは情報か、人間か

グーグルは、自社の使命を「世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセスできて使えるようにすること」と宣言している*1。この宣言だけを読むと、インターネットに広がる「世界中の情報」を検索可能な対象としてデータベース化するという純粋な目標にも読み取れる。

しかし実際に収集している「情報」の実態を考えると、その対象はウェブページなどのコンテンツ(=オブジェクト)に限定されるものではない。利用するユーザーの行動履歴、さらにいえばそこから推定される属性や趣味・嗜好などをもつ人間(=サブジェクト)もデータベース化の対象である。

アドネットワークを活用した行動ターゲティング広告の文脈では、グーグルのアルゴリズムは、客体としての情報(オブジェクト)よりも、情報に接触する主体(サブジェクト)の方を販売対象として商品化しているともいえる。

ユーザーがさまざまなオブジェクトを無料で検索し利用できるようにすることと引き換えに、選別され販売されているのはわたしたち自身ということだ。つまり、無料にみえるサービスの対価は、ユーザー自身の「プライバシー」である。

この構造は、グーグルに限定された話ではない。SNSや動画共有サイトなど、広告モデルを採用しているあらゆるプラットフォームが、アルゴリズムを駆使して、ユーザーの行動履歴を原材料とした商品化を行っている。

写真はイメージです 写真/Shutterstock
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アルゴリズムの最適化対象は、ユーザーの広告へのアテンションであり、さらにいえば広告主の商品購入への誘導である。