背景にユーザー特定の仕掛けがある
ウェブ上のアドネットワークを実現する技術のひとつが、「サードパーティ・クッキー」とよばれる共通化されたクッキーである。
クッキーとは、ウェブブラウザーを識別するための技術で、例を挙げれば、ECサイトで商品をみて買い物かごに入れた際にブラウザーを識別するクッキーを設定しておけば、そのユーザーが一度他のページをみてから再度買い物かごにアクセスしても、同じブラウザーであることが認識でき、買い物を続けることができる。
このようにクッキーは、広告だけでなく、複数のウェブページ間の移動においてユーザーの識別をスムーズに行うための機能でもあるため、ほとんどのウェブサイトで利用されている。
行動ターゲティング広告の実現基盤のひとつであるアドネットワークでは、このクッキーを共通化し、アドネットワークと提携をした複数のウェブサイト間で同じサードパーティ・クッキーを利用することで、ユーザーを識別している。
たとえば、グーグルのサードパーティ・クッキーを設置したA社のウェブサイトで、商品Xのページを閲覧したとする。そうするとA社を閲覧した行動履歴が、サードパーティ・クッキーを通じてグーグルのデータベースに蓄積される。
次に同じユーザーが、やはりグーグルのサードパーティ・クッキーを設置したB社のニュースサイトにアクセスしたとする。そうするとグーグルのアルゴリズムはそのユーザーがA社の商品Xを閲覧したことをもとに、B社の広告枠に商品Xに関連する広告を表示するのだ。
ユーザーがその広告をクリックすれば、グーグルからA社に広告料が請求される。このときの広告料は多くの場合CPC(1クリックあたりのコスト)といわれ、クリック数に応じてA社からグーグルに支払われ、その広告料の一部がB社に分配されることになる。そしてこれらの一連の処理は、すべてグーグルのアルゴリズムによって自動的に実行されるのだ。
このタイプの広告はみかける機会が多い一方で、背後にあるアドネットワークのしくみを知らなければ、なぜこのようなレコメンドが可能なのか違和感を覚える人も多いのではないだろうか。
なぜなら多くの場合、A社とB社には直接の関係がないにもかかわらず、「自分がみた」と思われるものが相互に連携して把握されているようにみえるからだ。グーグルなどのアドネットワークは、これらの広告主と広告掲載先をつなぐ背後のプラットフォームとして、ユーザーが気づきにくい形でデータを連携している。













