母と同居後、長男がひきこもる

朝美さんは夫と別居後、会社勤めをしたが続かず、42歳のときホームヘルパー1級(2013年度末で廃止。資格は現在も有効)の資格を取った。自分の父親が急に亡くなり、「もっと介護の知識があれば」と悔いが残ったのがきっかけだ。

特養で1年間働いたが腰を痛めて辞め、デイサービスを経て、グループホームに勤めた。

「人の顔色を見ながら生きてきたおかげで、認知症の人の介護で困ることはなかったのね。相手が上手く話せなくても考えていることがわかるから、認知症介護の仕事は天職だと思いました」

写真はイメージです(写真/Shutterstock)
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だが、父亡き後一人暮らしをしていた母親を呼び寄せたことで、歯車が狂い始める。一緒に暮らし始めると母親は朝美さんに昔の愚痴を言い続けたのだ。

「本当は産みたくなかったのとか、私が生まれたことで母が不幸になったみたいな話を次々と……。仕事を終えて帰るたんびに愚痴を聞かされて、なかなかハードでしょ。とにかく少しでも母と距離を取りたくて、夜勤のあるグループホームに勤めたんです。グループホームは利用者さんと職員が家族みたいで楽しくて、仕事にのめり込めたから何とかなっていたんだけど……」

写真はイメージです(写真/Shutterstock)
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実は、母と同居を始めてまもなく、高校を出て就職できずにアルバイトを転々としていた長男が「やりたいことがある」とバイトを辞めてしまっていた。図書館通いをする息子を、朝美さんは「好きなことをやればいい」と見守っていたのだが、母は孫が家にいることが気になって口を出す。

長男は祖母と関わらないよう昼夜逆転し、自分の部屋からほとんど出てこなくなってしまった。