「観音像とともに、遠くに消えてほしいです」

筆者は今年9月、事件現場に赴いた。青木被告の自宅の周囲はのどかな風景が広がっており、残忍な事件が起きたとは思えないような場所だ。

そんな静かな田舎道にただ一つ立っている観音像。青木被告の両親が息子のためか、はたまた被害にあった遺族のためか、自宅横の敷地内に建立させられている。

その観音像は、穏やかな表情で事件現場の方を向いている。だが、両親の償いの意思を具現化するような観音像の建立は、被害者遺族には説明されていなかったようだ。

「事件の一年後に、被告人の両親が事件現場に観音像を建てたことをはじめて知りました。私は一切認めていません」(被害者遺族の意見陳述から)

つづけて、「被告人の両親の自己満足に見えるからです。あなたたちが何を言おうと、私は認めません」と厳しい口調で陳述。

別の被害者遺族も「(被告人と両親には)観音像とともに、遠くに消えてほしいです」と口にした。

親のエゴなのか、誰を救ってほしかったのか。かえって遺族の悲しみを逆撫ですることとなった観音像はただ虚しく事件現場を見つめている。

被告の自宅の敷地内には、被告の両親が建てた観音像があった(写真/筆者撮影)
被告の自宅の敷地内には、被告の両親が建てた観音像があった(写真/筆者撮影)
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取材・文/学生傍聴人