“そういうもんだ”でやり過ごしたキャリア前半
結果として、苦しむ姿はお茶の間から反響を得る。さらに、和田社長の辣腕が大いに発揮されたのは、本格的にソロ活動をスタートさせた最初の楽曲『カレーライスの女』のジャケットだ。ソニンがここで披露した“裸エプロン”は大きな話題となった。
「ギリギリ10代の女の子にそんな格好させるなんて(笑)。でもそれも当時は“そういうもんだ”って感じで。
今じゃちょっと考えられない売り方で、カッコイイものじゃなかったかもしれない。でも話題になったしよかったんじゃないですか。楽曲自体もすばらしかったし、20年以上経った今でも覚えていてもらえる曲なんて、多くはないですからね」
“そういうもんだ”――。キャリア前半、彼女が芸能界で活動するにおいて、頭の中はその言葉で占められていたようだ。
EE JUMPデビュー曲のPV撮影で多額の制作費で作ってもらっても、『おっととっと夏だぜ!』でブレイクしても、「芸能界って“そういうもんだ”と思ってた」と気負いや感慨はなかった。
好調なスタートを切ったソロ歌手活動も次第に勢いは衰え、インディーズで新曲を発売することになっても、それは変わらない。
「(歌手活動の今後は)厳しいんだろうなとは思っていたけど、私は目の前の仕事を一生懸命やるだけで、あとは周りの大人に任せるしかないと。当時の私にセルフプロデュースする力なんてなかったですから」
そんな彼女が芸能活動において自我を持ったタイミングを聞くと、「ミュージカルに出会ってからですね」と即答する。
役者デビューは2003年のドラマ『高校教師』(TBS系)。脚本家の野島伸司氏直々のオファーでホスト狂いの女子高生役を演じたが、「台本の覚え方すらわからなくて、現場ではプレッシャーで毎日お腹が痛かった」と振り返る。
ミュージカルといえば、演技力や歌唱力が問われるジャンル。それでも、芸能界で何を体験しても過酷な仕事を強いられても、“そういうもんだ”で済ませていた彼女に、ミュージカルはSPEEDのライブを初めて見たとき以来のカルチャーショックを与えたのだった。