医者も患者も意識改革が必要
結局、一番の問題は医者の意識だ。「とりあえず検査」「念のために薬を出しておく」「患者(顧客)の要求を丸吞みする、満足度を上げる」「検査などで稼ぐ」このような思考を変えさせないといけない。
医学部での医学教育の段階から「資源は有限」「費用対効果を考えろ」と頭に叩き込む必要があると思うが、40歳未満の医師ではその意識改革は結構できていると言われている。それ以上の年齢の医師への生涯教育や指導が、絶対必要だ。
また、出来高払い(やればやるほど儲かる)ではなくて、治療の質と必要性などで評価する仕組みをもっと増やすように変えていくべきだろう。
患者側の意識も変える必要がある。「とりあえず病院へ行っておこう」「病院行ったら何かしてもらわないと」みたいな考えは捨ててほしい。
必要のない検査や薬は、あなたの体にとってマイナスかもしれない。受診して「大丈夫」と言われるだけでも価値があることを認識しないといけない。なんと言っても、費用は結局、保険料や税金として自分たちに跳ね返ってくるのだ。フリーライドしてしまう誘惑に負けてはいけない。
データで見える化しろ
さらに、どの医者・医療機関がどれだけムダな医療をしているか、データで「見える化」していくべきだ。
例えば、風邪患者への抗菌薬・抗生物質処方率が平均より明らかに高いだとか、症状もないのに採血をするだとか、必要以上に訪問診療をするような医者には、診療報酬の減額などのペナルティを科すことを検討しても良いかもしれない。
「医者の裁量権が~」などと言う人がいるけれど、エビデンスに基づかない「裁量」なんて、ただの思い込みだ。データに基づいて議論しよう。
既得権益層との戦いは避けられない
この改革は簡単ではない。医師、医師会、製薬会社、医療機器メーカー、みんなが既得権益を守ろうとするからだ。
しかし、このまま放置したら医療保険制度が破綻するのは時間の問題だ。若い世代が、高齢者に使われるムダな医療費を負担し続ける構造なんて、持続可能なわけがない。
誰かが悪者になってでも、改革を進めないといけない。
私は別に医療関係者に嫌われてもいいから、言うべきことは言いたいと思う。
医療の本質は「患者を健康にすること」だ。ムダな検査や治療は、その目的にそもそも反している。「昔からやってるから」「みんなやってるから」は理由にならない。
ムダをできるだけ削って、本当に必要な医療に資源を集中させる。これが、持続可能な医療システムを作る唯一の方法だ。
文句があるなら、データを持ってこい、と言いたい。感情論はいらない。合理的に考えて、行動せよ。それが、この国の医療を救う道だ。
文/堀江貴文