Choosing Wiselyを知っているか?

アメリカで2012年から始まった「Choosing Wisely」というキャンペーンがある。「賢く選ぼう」という意味だ。医者と患者が「本当に必要な医療か」を話し合おう、というキャンペーンである。80以上の医学会が参加して、700以上の「やらなくていい検査・治療」をリストアップしている。例えば、

軽い頭痛症状でCTやMRIは不要
風邪に抗菌薬・抗生物質は効かない
低リスクの手術前の心電図は不要

こういうことは、日本でもやるべきだろう。しかし実際には、不勉強な医師が多かったり、医師会の抵抗があったり、「患者様は神様」みたいな風潮が残っていたり、根拠のない要求をする患者がいたりでなかなか進まない。

イギリスのNICE(国立医療技術評価機構)は、もっと踏み込んでいる。「do not do(やるな)」リストを作って公開しているのだ。

これは凄く合理的だ。効果がない、費用対効果が低すぎる、害になる可能性の方が高い医療行為を明確にして、「やるな」と言い切ってしまう。

日本だったら「医師の裁量」とか「患者の選択の自由が~」とか言い出す人がいそうだが、税金と保険を使っている以上、ムダなことに金を使うなという強い圧力は絶対必要だ。

写真はイメージです(写真/Shutterstock)
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ムダな医療を「リスト化」せよ

私の提案はシンプルだ。ムダな医療を皆で確認するために、まずはリストや条件の原則を作ろう。

リストを作った上で議論を進め、やはり効果の乏しい医療行為は、初年度20%減、次年度50%減、3年後には保険適用外、といった形で切っていって、医療費を削減する。これくらいやらないと変わらない。

「でも急に変えたら現場が混乱する」という意見もあるだろう。だから段階的に行うべきなのだ。医者も患者も適応するには時間が必要だ。しかし、ダラダラ先延ばしにするのは問題外だ。

そして削った金をどう使うか。私は「予防医療」に回すべきだと思っている。

ワクチン接種の強化、生活習慣病の早期発見・介入、健康教育の充実。こういうのに投資した方が、長期的には医療費・社会保障費削減になるし、国民も健康になる。

写真はイメージです(写真/Shutterstock)
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