ムダな医療に年間数兆円を垂れ流している現実

知っているだろうか? 日本の医療費は年間50兆円を超えようとしているのだ。しかもその10~20%が「ムダな医療」に使われているのではないかとも言われている。つまり5兆円から10兆円をドブに捨てているようなものなのだ。

これは本当に危機的な状態だと思う。

私が言う「ムダな医療」というのは、科学的根拠がほとんどないか、患者にとって利益があるどころか、むしろ害になる可能性すらある医療のことだ。

例えば、風邪で受診して抗菌薬・抗生物質をもらったことがある人もいるだろう。抗菌薬はウイルスには効かないのでムダだ。しかし、そのような薬の出しかたをする医者はまだ多くいるし、知識もないのに欲しがる患者もいる。これは聞きかじりや思い込みによって信じ込んだ宗教のようなものだ。

写真はイメージです(写真/Shutterstock)
写真はイメージです(写真/Shutterstock)
すべての画像を見る

「昔からやってるから」は思考停止の極み

「でも、伝統的な医療には価値があるんじゃない?」と言う人もいるだろう。確かに漢方とか鍼灸とか、長年使われてきて最近になってエビデンスを作ろうと努力されはじめたものもある。

でも「昔からやってるから」というだけで無批判に信用してやり続けるのは、完全に思考停止だ。

瀉血(しゃけつ)という治療法を知っているだろうか? 現在でも真性多血症や肺炎など一部の治療に用いられているが、昔は高血圧症や脚気(かっけ)をはじめ万能の治療法として、血を抜いていた。現代の人からしたら全くもってまともな治療法ではないが、近世までは「伝統的で万能の治療法」だった。

重要なのは、本当に効果があるかどうかを科学的に検証し、安全性と効果が証明されたもののみを実施することだ。「伝統医療」からきたものでも、これらが証明されているものは残せばいい。しかし「なんとなく効きそう」というレベルで治療薬や治療法を保険適用していたら、医療費なんていくらあっても足りない。

写真はイメージです(写真/Shutterstock)
写真はイメージです(写真/Shutterstock)