振り返りたい「5本」のテレビ番組
テレビは新しい刺激を求めるメディアだ。常に新しい話題や新しいタレントが供給される。一方で、反復のメディアでもある。同じ曜日・時間帯に、ほぼ同じ出演者が似たような内容を届ける。
新しいものも、やがて反復の周期に組み込まれる。しかし、同じことを繰り返すなかで生じるズレが、新たな“トガり”を生み出す。「古い」「予定調和」「似た番組ばかり」――確かにテレビはそうかもしれないが、それは半面にすぎない。今週、個人的に心に刺さった番組を5つ紹介してみたい。
■『千鳥ノブと渋谷お笑い演芸館』(9月22日、NHK総合)
ノブ(千鳥)がMCの新しいお笑い番組。哲夫(笑い飯)、川原克己(天竺鼠)、国崎和也(ランジャタイ)、堂前透(ロングコートダディ)、川北茂澄(真空ジェシカ)が映像ネタを披露するなどしていた。
ただ、この顔ぶれからもわかるように、流れたのは普通のネタではない。川原は喫茶店で店員を延々と呼び続け、国崎はミニタワーに扮して光るキリンに怯え続け、哲夫は漢字の部首「門構え」に挟まれ続ける。しつこいまでの反復には、もはや“べき乗の美学”を感じる。
ゲストに「お笑いをほとんどみない」という俳優・長谷川博己が呼ばれていたのも謎だ。しかし、長谷川にあわせたツッコミをノブが入れることで、クセのある芸人たちのネタが程よく翻訳されていたようにも思う。NHKで奇妙なお笑い番組がはじまった。
■『ぽかぽか』(9月25日、フジテレビ系)
そんなノブいわく「古(いにしえ)のタレント名鑑」とも言える『ぽかぽか』のトークゲスト。この日の出演は柴田理恵と奥山佳恵だった。
目を引いたのは、奥山が松本潤について語る場面。大ファンだという奥山は、松本との妄想を日々繰り広げているらしい。松本との「理想の死に方」まで熱弁し、「松本くんは死に方も綺麗なのよ」などと語っていた。
お昼の番組でアイドルと一緒に死ぬ話。ちょっとした発言で大炎上してしまうテレビの世界で、生放送の『ぽかぽか』は定期的にこういうシーンがあるから目が離せない。