SUPER BUTTER DOGの永積タカシの実体験が生んだ名曲
めったにはないことだが、レコーディング中にOKテイクが録れた瞬間、「いずれはスタンダード・ソングになる」と予感させる歌がある。
2001年10月にリリースされた、SUPER BUTTER DOGのシングル曲、『サヨナラCOLOR』は、そんな歌だった。
バンドのヴォーカル担当だった永積タカシが、自分自身の体験から生まれてきた、夢と現実の狭間における切実な想いを綴った歌詞が秀逸だ。
この歌を最初に広める役割を果たしたのは、小泉今日子だった。アイドルから女優への道に活動をシフトしつつあった2003年の春、23枚目のオリジナル・アルバム『厚木I.C.』で、誰よりも早くカヴァーしたのである。
また、初めて聴いた時からすっかり歌に惚れ込んだという竹中直人は、それから4年後、原田知世と自らの主演で『サヨナラCOLOR』を監督して、その思いを実現させることになった。
SUPER BUTTER DOGの永積タカシくんが僕の家に遊びにきてくれて、ギターを弾きながら「サヨナラCOLOR」を歌ってくれたんです。その時のタカシくんの歌が本当に心に染みてね、「この歌をテーマに映画を撮りたい」と思ったんです。
日本にはその昔、歌謡映画というジャンルがあった。ヒット曲を題材にした映画が次々と作られていた時代のことだ。しかし、主題歌にしたいほど、歌への思いを監督が先に持っていて、そこからインスパイアされた映画が生まれてくるのは稀だった。
竹中はもう一つの夢を抱いていた。歌に触発されて生まれた映画のエンディング・テーマを、忌野清志郎と永積タカシのデュエットで流したいという夢だった。