忌野清志郎と永積タカシ、奇跡のつながり

RCサクセションのシングルとして1976年に発表された『スローバラード』は、忌野清志郎による夢と予感についての歌だった。

発売当時はまったくヒットしなかった『スローバラード』だったが、クチコミで少しずつ発見され、時の経過とともに聴き手に共有され、名曲と呼ばれるようになった。

発売が一度見送られるなど不運な境遇に見舞われながらも日本のロック・スタンダードの一つにも挙げられる名曲『スローバラード/やさしさ』(1976年1月21日発売、POLYDOR)
発売が一度見送られるなど不運な境遇に見舞われながらも日本のロック・スタンダードの一つにも挙げられる名曲『スローバラード/やさしさ』(1976年1月21日発売、POLYDOR)

忌野清志郎は「竹中、映画を撮っているそうじゃないか、出番はないか」と、映画を撮るたびに必ず駆け付けてくれるほど親しい友人だった。そして清志郎と永積タカシは、偶然にも国分寺市立第三中学校の先輩と後輩の関係にあった。竹中の夢はこうして叶うことになるのだった。

映画には、中島みゆきを筆頭に、忌野清志郎、永積タカシ、高野寛、三宅伸治、斉藤和義など、自身の交友関係から多くのミュージシャンが友情出演してくれた。

映画が公開された後、2006年に大阪城ホールで行われた忌野清志郎のイベント『新・ナニワサリバンショー』で、二人はライヴでも共演している。

大阪城ホール(PhotoAC)
大阪城ホール(PhotoAC)
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その夜、清志郎に「国分寺第三中学校の後輩!」と呼ばれて登場したハナレグミこと永積タカシは、二人でギターを持って楽しそうにRCサクセションの『君が僕を知ってる』をデュエットし、開口一番、「先輩、気持ちいいです!」と場内を沸かせた。

それに続いて『サヨナラCOLOR』が始まると、ざわついていた会場全体は一瞬にして静まり返った。忌野清志郎の哀切な声がハーモニーで加わり、名曲は広くスタンダードとして知られていくことになった。

文/佐藤剛 編集/TAP the POP