高齢化で放出される家屋が増え、今後も狭小戸建てが増加

同社は東京23区といっても大田区や足立区、葛飾区といった、住宅地としては比較的人気が高くないエリアを主戦場としており、「購入価格を抑えながらも東京にこだわりたい」というニーズを上手く捉えている。

荒川区のように、狭小住宅の急増にブレーキをかけるべく規制を導入する自治体もあるものの、若い世帯の獲得競争に遅れをとることになるという事情もあり、あまり広がっていないのが実情だ。高齢化により放出される家屋が増える中、今後も狭小戸建てが増加することはほぼ確実な情勢だ

現役世代のニーズを汲み取って雨後の筍のごとく増えている狭小戸建てだが、購入者を待ち受けるのはバラ色の未来ではない。

「中古市場では狭小戸建てはあまり人気がない」

前述の城東エリアの不動産仲介会社社長はこう断言する。手頃な価格で新築の物件が大量に供給されるという状況下、わざわざ中古物件を購入したがる人は決して多くはない。

過去10年間、都内ではファミリータイプの築浅マンションはほとんどの物件で値上がりしているが、狭小戸建ては購入価格を下回る価格で取引されることも多い。現在の東京のマンション価格を支えているのでは実需だけではなく、将来の値上がりを見越した半分実需、半分投資の「半住半投」という形の投資マネーの存在がある。

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しかし、狭小戸建てに関しては、こうした資金の流入は限定的だ。少なくとも、積極的に売却益を狙うタイプの不動産でないことは頭の片隅に入れておく必要があるだろう。

先程紹介した通り、マンションと異なり修繕積立金がないためランニングコストが低いのは狭小戸建ての大きなメリットだが、裏を返せば自分で修繕費用を積み立てておく必要があるということだ。

外壁や屋根、配管など、築20年を超えた物件は数十万、時には100万円を超えるような出費を覚悟する必要がある。隣の家との間隔が狭くて足場が組めないというケースもあり、面積の割に、高くなる可能性もある。

マンションのように大規模修繕を前に売り逃げるという訳にもいかず、長い付き合いを覚悟した上で購入すべきものだが、大半の購入者はそこまで深く考えていないというのが実情だ。

高齢化が進む中、階段の上り下りが必要な狭小戸建てが長期的に価値を保つのは難しいだろう。しかし、はじめて家を購入する子育て世帯にとっては、狭小戸建てが最適解になるのもまた事実。

時代が生んだ寵児か、それとも徒花(あだばな)として将来の負債になるのか。最終的に狭小戸建てに評価を下すまでには、もう少し時間がかかりそうだ。

文/築地コンフィデンシャル