マンションではなく狭小戸建てがファーストチョイスに
マンション市場は現在、バブル期以来の盛り上がり方を見せている。
新築に手が届かないのであればと中古に目を向ける人も多いが、中古市場も更に過熱しているから始末が悪い。
東京カンテイによると、8月の東京23区の中古マンション(面積70㎡換算)は前年同月比38%増の1億721万円。新築に手が出ない人が中古マーケットになだれ込んでおり、中古でも1億円超えが当たり前となっている。
かつての手の届かない存在の象徴だった「億ション」だが、令和の東京ではもはや住宅購入の前提条件となりつつある。日銀の金融緩和の終了に伴い、住宅ローンの金利は上昇し支払い負担は増えているが、価格上昇は止まる気配がなく、むしろ加速しているのが実情だ。
こうした状況下、近年、人気を博しているのが3階建の狭小戸建てだ。狭い敷地に同じような建物がぎゅうぎゅう詰めに建つ光景は、都内周縁部では珍しいものではなくなった。それもそのはず、狭小戸建てはマンションに比べ、価格が圧倒的に安いのだ。
東京カンテイによると、都内の新築狭小戸建ての平均価格は8月時点で7163万円にとどまる。共働き世帯のパワーカップルといえども、1億円のローンを組める層は多くない。特に30代から40代のはじめて住宅を買う一次取得者層にとっては、マンションではなく狭小戸建てがファーストチョイスになりつつある。
この市場の王者ともいえる存在が、「東京に、家を持とう」をキャッチフレーズに業績を拡大してきたオープンハウスだ。首都圏の駅前で、「家、探してませんか?」とチラシを片手に営業活動をしている人を見たことはないだろうか。
少しでも足を止めようものなら怒涛の営業トークを繰り広げる彼らの存在は、ここ10年ほどですっかり定着した。それもそのはず、同社の2025年9月期の売上高は1兆3100億円、純利益は1000億円の見通しで、それぞれ10年前の7倍以上に拡大している。
1997年創業の会社ながら、こと住宅分野においては、三井不動産や住友不動産といった財閥系デベロッパーと肩を並べる存在になりつつある。
実際にオープンハウスの販売する住宅を訪れると、売れる理由は一目瞭然だ。50㎡程度の狭い土地という制約条件がありながら、空間を無駄なく利用しており、延床面積は80㎡程度を確保。階段が狭かったり3階の屋根が急だったりと注文点がないわけではないが、家族4人で暮らすには十分だ。
近年、マンションは3LDKでも60㎡程度の物件が増えているので、相対的に広い狭小戸建てのメリットは増している。加えて管理費や共益費、駐車場代といったコストもかからないため、近隣に建つマンションに比べ月々の維持費を数万円単位で抑えることができるという点も地味に大きい。