急成長「オープンハウス」の同業者も舌を巻く営業力

「オープンハウスの最大の強みは土地の仕入れと設計だ」

大手ハウスメーカーの社員はこう語る。相続税が高い日本では、昭和時代に建設された家や工場跡地、倉庫などが持ち主の死去や廃業に伴い売られることがある。

こうした情報をいち早く嗅ぎつける能力がピカイチだというのだ。同社は土地の仕入れ専門の社員を数多く抱えており、地場の不動産仲介会社に毎日のように足を運び、新しい土地が売りに出ていないかを確認して回っている。

城東エリアで不動産仲介会社を経営する男性はオープンハウスの社員について「あまりにもしつこいので出禁にしても、翌日にはまた来る。いまどき珍しい、根性がある若者が多い」と呆れながらも感心する。

自ら汗をかき、靴底をすり減らして情報を集める仕入れ部隊のたくましさは、体育会系気質の企業が多い不動産業界でも群を抜いていると業界関係者は口を揃える。

一方、「営業や仕入れだけ見ると体育会系の会社のようだが、裏で動く設計部隊こそが肝だ」と前述のハウスメーカー社員は分析する。

建築規制などの制限の中で床面積を捻出する技術もさることながら、仕入れた土地情報をもとに、形や面積からどれだけ分筆すれば何軒の住宅を建てることができるかを即座に計算し、損益分岐点から購入価格を弾き出す独自のノウハウは他社にはないものだ。

画像はイメージです
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前述の不動産仲介の経営者も「人気が出そうな土地でも条件が合わなければ購入しないし、形が悪い土地でも採算が合うと判断すれば買う。AIを相手にしているようだ」と舌を巻く。

土地が売られたという情報を他社よりも早く入手する情報感度の高さに加え、買い取り価格を即座に提示する即決即断型のシステムは、土地を早く売って現金化したい人にとってもメリットが大きい。

こうして仕入れた土地に、建築資材の大量調達と規格化によって原価を抑えた戸建てを建てるビジネスは完成度が高く、競合他社では太刀打ちできないレベルだという。

オープンハウスの躍進を支える隠れた追い風となっているのが、東京都の政策だ。保育園の無償化、子ども1人につき毎月5000円を貰える「018サポート」、出産時にもらえる10万円相当の育児グッズ、私立中学校の授業料補助、大学生向けの海外留学費用支援……ここ数年間、小池百合子知事の下で次々と導入された子育て世帯への支援は手厚く、有形無形の支援も合わせ、東京と周辺県では子育てをする上で雲泥の差が生じている。