歌舞伎町タワーにとっての「最大の不幸」 

東急グループが新宿・歌舞伎町に23年に開業した東急歌舞伎町タワーが「滑っている」と評判だ。開業早々、性別を問わず使えるジェンダーレストイレがネットで炎上し、わずか4ヶ月で廃止となるなど曰く付き。

今度は目玉施設である「新宿カブキhall」というフードコートがガラガラだと一部メディアで騒がれるようになった。実際、どうなっているのか。足を運んでみた。

東急歌舞伎町タワー
東急歌舞伎町タワー
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現地を訪れたのは7月上旬の週末の夜。新宿駅から歌舞伎町まで路上は外国人観光客でひしめき合っていた。路上で酒盛りをする外国人の集団があれば、抜け目なく彼らにテキーラを売る店、そして定期的に流れる新宿警察署のアナウンス……と日本らしからぬカオスな状態だ。

そんな中、歌舞伎町タワーがある一角は比較的落ち着いていた。目の前のトー横広場が歌舞伎町に集まる少年少女、いわゆる「トー横キッズ」のたまり場になっていたこともあり、彼らを締め出すためにゲートを設置したほか、警備員が巡回していることで少し物々しい雰囲気が漂っており、外国人観光客も怪訝な表情となっていた。

歌舞伎町タワーにとって最大の不幸は、正面玄関前の広場に前述のような異様な雰囲気が漂っており、日本最大の歓楽街である歌舞伎町を楽しむために訪れたインバウンドの動線が途切れてしまっていることだろう。広場を隔てた通りは大賑わいなのに、歌舞伎町タワーにまで続いていないのだ。

正面玄関前。インバウンドの動線が、広場によって途切れてしまっている
正面玄関前。インバウンドの動線が、広場によって途切れてしまっている

歌舞伎町タワーに足を踏み入れてみると、ネオンがギラギラと主張するフードコートはガラガラとまでは言えないまでも、空席が目立った。正面にしつらえられたDJブースではDJがなにやらプレイを披露していたが、客の反応も薄い。

日本全国の料理を集めたという点では、渋谷のMIYASHITA PARK内にある「渋谷横丁」と似ているが、渋谷駅からのアクセスが良い渋谷横丁がインバウンドで連日賑わっているのとは対照的だ。

ネオ・トーキョーの雰囲気を演出するネオンがむしろディストピア

イタリアから来たという、ビールジョッキを傾けていた2人組の女性に話を聞いてみた。「注文してからすぐに料理が届くし、日本各地の名物が食べられて最高よ」と満足げだったが、客の人数が少ないからこそ手厚いサービスを受けられるという側面はあるだろう。店員は暇そうにしていた。

フードコートとエスカレーターで繋がっている3階にはnamco TOKYOというバンダイナムコが運営するアミューズメント施設がある。ゲームセンターやガチャガチャ、アルコールや軽飲食が楽しめる空間だが、こちらも人の数はまばらだ。

外国人観光客が太鼓の達人やマリオカートといったゲームを楽しんでいたが、週末の夜としては寂しい雰囲気だった。こちらの階もネオ・トーキョーの雰囲気を醸し出すためにネオンを掲げているが、むしろディストピア感を醸し出してしまっている。

総じて残念な感じが漂う歌舞伎町タワーだが、開発に失敗したのだろうか? そう単純に言い切れないのが不動産開発の面白さだ。

地上48階、地下5階で構成される歌舞伎町タワーだが、フロアの大半を占めるのがホテルとなっている。東急にとって収益源となっているのは飲食やアミューズメントではなく、こちらのホテルだからだ。