フランス料理ではパンはあくまでも「副食」?

外でランチをたくさんするようになってから、私が気付いたことがありました。それはお昼ごはんを簡単に済ませる人があまりいないことです。

女性にしろ、男性にしろ、そして年齢に関係なく、ランチ・タイムでも前菜、メイン、そしてデザートのコース料理を注文します。私など「カロリー・オーバーなのではないか」などと心配してしまうわけです。

そのことをある日ランチの最中に漏らすと、プリプリしながらこう言う人がありました。

「疲れている時はきちんと食べなきゃダメって言ったでしょ!」

私が相変わらずカロリーを気にしていることに呆れているソフィアです。彼女の言う通り、私は疲れてお腹が空いていました。フランスのランチ・タイムは13時を過ぎないと始まらないため、着席する頃にはお腹がペコペコなのです。

反省した私はとりあえずお腹を満たそうとパンに手を伸ばしました。すると、すかさず「待った」がかかりました。

「メインが出てくるまでパンはダメよ」

パンのイメージ 写真/Shutterstock
パンのイメージ 写真/Shutterstock
すべての画像を見る

ソフィアがそう言うのです。

その時ソフィアは前菜にポワロー葱のヴィネグレット・ソース、メインにタルタルステーキを注文していました。そしてパンに手をつけたのは文字通り、メイン料理が出てきてから。ソースを拭うためにたったの1〜2切れ食べただけでした。

そういえば、サンドイッチなどで食事を済ませる時は別にして、パンはお米のように「主食」という扱いを受けていません。

フランス人というと、バゲットを片手に歩いているイメージが湧くかもしれませんが、パンは食事の時につまむ程度です。フランス料理ではパンはあくまでも「副食」、つまり補佐役なのです。

それにしてもなぜソフィアは「メインが出てくるまでパンに手をつけない」のでしょう。その時はそのことをあまり気に留めていなかった私ですが、最近になってその謎が解けました。それは実は、ものすごく的を射た食べ方だったのです。