大事なのは、食べる量よりも食べる順番
『Glucose Revolution』(日本語訳タイトル『人生が変わる 血糖値コントロール大全』かんき出版刊)という本がフランスでベストセラーに輝いたのは2022年のことです。
フランス人の生化学者である筆者のジェシー・インチャウスペ氏は、自ら血糖測定器(グルコース・モニター)を開発し、エビデンスをもとに血糖値スパイクと体調不良の関係性を説いた強者です。
本の内容を要約すると、血糖値の変動の幅が小さいほど、健康になることができるというものです。
更には、血糖値が急に上がると、脳は血糖値を下げるべく多くのインスリンを分泌させるため、脂肪をためやすくなり、結果的には太りやすい体型になってしまうというのです。
私が驚いてしまったのは、筆者の「食べる順番に気をつけよ」というくだりでした。ひとことで説明すれば、「まずは野菜、次にタンパク質や良性の脂肪、最後に炭水化物を取る」ことが血糖値スパイクを防ぐ、最良の食べ方だというのです。
思い起こせば、ソフィアは前菜にはなるべく野菜を取り、メインはお肉やお魚などのタンパク質を取り入れていました。そしてお腹がある程度満たされた頃になってやっとパンに手を伸ばしていました。
ソフィアのランチ・パターンはまさに、血糖値の上昇を緩やかにする食べ方、そして太りにくい食べ方だったのです。
食べてもちっとも太らないソフィアは、食べる量よりも、食べる順番を気にしていたのです。
最近再会したソフィアにそのことを言うと、彼女は、「そこまで意識して食べていたわけではない」と笑っていました。そして、「別に太らないためにそういう食べ方をしていたわけではない」と真っ向から否定してきました。「メインが出てくるまでパンは食べるな」という教えは、医者である彼女の父親のものだと言います。
その父親がよくソフィアに、「お腹が空いている時に炭水化物から先に取り入れると、眠気や頭痛など、仕事に支障をきたす症状を起こす可能性がある」と言い聞かせていたそうです。
ジェシー・インチャウスペ氏によると、血糖値スパイクはそれだけではなく、「ニキビなどの肌荒れ、更には更年期障害、糖尿病や認知症といった疾患の原因にもなり得る」ということですから、ソフィアのお父さんの助言は非常に的を得ていたということになります。
血糖値スパイクを防ぐ食べ方が「痩せる」かといえば、私もちょっと語弊があるような気がします。ソフィアが、そして多くのパリジェンヌが無意識に実践しているこの「食べる順番」は、「痩せること」よりも「体調不良を防ぐこと」に有効な手段なのではないでしょうか。
そしてそれこそが、ダイエットが嫌いなパリジェンヌが日頃から気を付けていることなのです。
#3に続く
文/藤原淳 写真/Shutterstock