家庭崩壊の危機、受験本番残り3か月で撤退を決断
受験本番まで時間もない。まりーさんの焦りと不安はさらに増していった。
「次男を怒りながら、頭の中では『このままだと家庭が崩壊するかも』という危機感も抱いていました。でも、当時は受験をやめようという決断ができなかった。私たち夫婦に中学受験以外の選択肢がなかったんです。
次男と言い争いになるたびに、お互いの心がズタボロになっていき、『私、この子のこと嫌いになってしまうかも』という恐怖すら感じていました」
ある日、まりーさんのもとに塾から電話がかかってきた。どうやら次男は塾に行っていなかったという。「何をしているのか?」「どこで誰とお弁当を食べているのか?」。いくら次男に問い詰めても口を割らなかった。まりーさんがなんとか聞き出したところ、塾をさぼって渋谷の路上で一人、こっそりお弁当を食べていることがわかった。
「渋谷の路上で一人お弁当を食べる次男を想像したとき、胸がしめつけられました。その姿を想像して、ようやく受験を辞めようと思いました。いわゆる中学受験撤退です。
でも、中学受験撤退って、普通は4年生とか5年生の秋に決断しますよね。次男の場合、撤退を決めたのが6年生の11月。あと3か月で本番という時期でした」
受験本番を目前に控えた中学受験撤退。それでもまりーさんに迷いはなかった。
「『あと、3か月だけ我慢すればいいのに』と周りの人からはたくさん言われました。でも、大人にとってはわずか3か月かもしれないけど、次男にとっては小学校時代の大切な3か月。人生に与えるインパクトは、私たち大人が思っているより大きいんじゃないかって思ったんです」