もはやエレベーターは他人と乗ってはいけないものなのか

9月5日付の朝日新聞の「天声人語」で、ある50代女性がエレベーターに乗ったときのエピソードが取り上げられていた。

この女性がひとりで雑居ビルのエレベーターに乗っていたところ、後から男性が乗ってきたので咄嗟に降りた。すると男性は怪しまれたかと不快に感じたのか、「ババアが」と捨て台詞を吐いたのだそうだ。女性は「若くもないのに自意識過剰だ」と言われたようでとても悲しい思いをしたという。

そしてこれは神戸市のマンションで住民女性がエレベーター内で殺害された事件の数日後の出来事だった。

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この「天声人語」を読んで筆者はしばし考え込んだ。

50代女性の気持ちは同性として大変よくわかる。
単純に怖かっただろうし、何かあってからでは遅い。

男性の気持ちもこれまた察するに難くない。
ただエレベーターを利用しただけなのに、不審者扱いされては悪態のひとつもつきたくなるだろう。

では、この場の最適解はなんだったのか。

女性は「怖いな」と思っても「まさかそうしょっちゅう犯罪が起きるわけではないし」「若くもない自分が襲われると思うなんて」と我慢すべきだったのか。

男性は「しょうがない、あんな事件があったばかりだし」「まあ、イラッとはするけど」とこれまた我慢すべきだったのか。

おそらく正解はない。