送りバントは本当に手堅い作戦?
序盤に大量得点を狙う場合、どうしても気になってしまうのが「送りバント」の有効性ではないでしょうか。「序盤に大量得点を狙うのが正しい」としても、「先取点を取って優位に試合を進めたい」という考えも大きなウエートを占めるからです。
先取点のメリットはあります。特にチームの監督は、先取点が入るといろいろな戦術を実行しやすくなります。1点ビハインドや同点でスチールやエンドランをかけて失敗すると目立ちますが、リードしている状況なら目立ちにくいものです。
1点を先制すれば、大胆な戦術を実行しやすくなり、そこから大量得点を狙っていけるという考え方もできるでしょう。
観ているファンの目線に立ってください。勝っている状況なら積極的に動いても楽しめますが、負けている状況で動いて失敗するとダメージを大きく感じ「余計なことをするな」と思うのではないでしょうか。
ではここで、無死一塁という状況に限定し、送りバントをして得点が入る確率と送りバントをしないで得点が入る確率を調べてみました。日本球界全体の平均で、2022年の記録から3年前までを遡ってみたデータがあります。
今では送りバントをしない方が得点確率は上がることをご存じの方が多いでしょう。近年の3年間を平均すると、犠打をした場合の得点確率38.5%に対し、しなかった場合の得点確率は59.9%。約20%の違いがあります。これほど差があると思っている人は少ないのではないでしょうか。そしてどれだけ得点したかの得点数になれば、もっと差が開くのは間違いありません。
「大量得点を狙う」も「先取点が欲しい」も、送りバントをしない方が確率は上がります。
その理由を推測してみました。送りバントをすると一塁が空きます。そうなると、相手バッテリーは「歩かせてもいい」と考える状況ができます。特に僅差の試合で終盤にもなれば、そういう攻めが多くなります。「カウントが悪くなれば、無理をして勝負しない」となるわけです。厳しいコースだけを狙って勝負できるわけですから、バッターにとっては厄介です。