「送りバントをしていなかったら、もっと打てていたのに」に対して宮本の回答は?
確率からいうと、無死一塁からの送りバントは「手堅い作戦」ではないのです。しかし、時と場合によっては完全否定することもできないということが分かってもらえたと思います。
個人的な「送りバント」の話をします。自慢するつもりはまったくないのですが、私は通算408犠打で歴代3位の“送りバント男”でした。1シーズン67犠打の日本記録も持っています。2000本安打を達成している選手の中で、300犠打以上している選手はいません。
テレビや雑誌、イベントなどで私を紹介する場面でも、犠打記録が披露されます。いわば送りバントは私の「代名詞」のようなものです。しかし正直に言うと「恥ずかしい」という気持ちになってしまうのです。
私の中で「送りバント」は、プロで生き残るために仕方なくやっていたものです。打てないから送りバントのサインを出されると思っていました。とはいえ、いい加減にやっていたわけではありません。生き残るために必死にやっていたことだけは付け加えておきます。
みんなからは「送りバントをしていなかったら、もっと打てていたのにな」と労われることもありますが、それは違うと思っています。当時、小技がうまくなければレギュラーにはなれなかったし、多くの試合には出られなかったでしょう。
野球教室などで子供たちに「宮本さんのようなプレーヤーになりたい」と言われることがあります。親御さんから聞いたのでしょうが、そんなときは「そんなスケールの小さなプレーヤーを目指すな。ホームランバッターを目指しなさい」と言い続けています。幼いときから自分の限界を決めていたら、もっと高いレベルの野球にはついていけなくなるからです。
送りバントはしない方がいい。送りバントは打てない選手がやるもの。こう言うと「お前が言うな!」という突っ込みがあるでしょう。そんな突っ込みは、この先も私が死ぬまで潔く、甘んじて受け止めようと思っています。
文/宮本慎也













