送りバントはそれほど効率のいい戦術ではない

では、ここで2020年から2024年までの5年間のペナントレースで、アウトカウントに関係なく、一塁に走者が出ている場合と二塁に走者が出ている場合。

塁上に走者が一人(一塁、または二塁のケース)の打率とOPS
塁上に走者が一人(一塁、または二塁のケース)の打率とOPS

さらに一、三塁に走者が出ている場合と二、三塁に走者が出ている場合とで、バッターの打率とOPSを出してみました。

塁上に走者が二人(一、三塁または二、三塁ケース)の打率とOPS
塁上に走者が二人(一、三塁または二、三塁ケース)の打率とOPS

OPSとは「On-base plus slugging」の略で出塁率と長打率を足し合わせた値。打席当たりの総合的な打撃貢献度を表し、数値が高いほど、打席当たりでのチームの得点増に貢献する打者と評価されます。

さて、データを見ると予想通りの結果ですが、皆さんの予想はいかがだったでしょう?走者が一塁と二塁で比べると、すべての打率は走者が二塁(一塁が空いているケース)の方が低くなります。OPSは2020年だけ、一塁に走者がいるときの方が高いですが、それ以外の年は打率と逆です。やはり一塁が空いていればバッテリーに「歩かせてもいい」という意識が働き、打率は低くなりますが、四球による出塁率が高くなり、OPSは上がるということです。  

データを見ても一、三塁と二、三塁を比べると2021年以外の年は、一塁に走者がいる一、三塁の方の打率が高くなっています。OPSも2023年以外は、一塁が空いている二、三塁が高くなっています。送りバントで相手チームに1アウトをやり、わざわざヒットが出にくい状況をつくっているわけです。四球で出れば再び一塁が走者で埋まり、打率は上がりますが、送りバントはそれほど効率のいい戦術ではないということが分かるでしょう。

一塁が空いている状況で強打者を打席に迎えると、「中途半端になるのが一番よくない。ベンチから勝負なら勝負、歩かせるなら歩かせると指示を明確にした方がいい」と解説する人がいます。

完全に否定するつもりはありません。しかし、プロなら「勝負にいってギリギリのコースがボールになり、カウントが悪くなったら歩かせる」という高度な戦術をしてほしいとも思っています。

もちろん、ピッチャーのタイプや状況、バッターの調子や格などによっても違います。プロのピッチャーでもストライクが投げられなくなる場合はあります。それでも完全にボールゾーンに投げろというのであれば、今の私にも投げられるし、その辺にいる人でもボールゾーンには投げられます。