財産を「壊される」ケースも
いったいなぜこのようなことが起こりうるのか。多くの後見トラブルに対応してきた一般社団法人「後見の杜」の宮内康二代表はこう語る。
「一番の問題は報酬制度の矛盾にあります。本来、この制度は『本人の残りの人生を豊かに過ごすため医療や介護も含めてお金を適切に使おう』という思想のもと作られたものですが、後見人の報酬は本人の預貯金がある分だけ高くなるという仕組みとなっています」(宮内氏、以下同)
利用者の「管理財産の額」が高額になると、管理事務の複雑性から後見人の基本報酬が増える仕組みであることから、それを悪用するケースが全国で後を絶たないという。
「必要性がないのに株や不動産を勝手に売却して預貯金に換えられるなど後見人に財産を『壊される』トラブルや、嫌がる高齢者を施設にむりやり入居させ、施設を半年ごとに転々とさせることで後見人が紹介料をもらい続けるなどの悪質事案も確認されています」
報酬を得るために権利を濫用する一方、報酬に繋がらない業務のずさんさも確認されている。
「医療や介護に関する打合せに顔を出さないどころか、本人に一度も会いに来ないケースもあります。そのため肺がんのリスクがあった高齢者が末期状態に陥ってしまったり、後見人が電気料金を払い忘れたことで、真夏にクーラーや冷蔵庫が使えなくなった高齢者の方もいました」