多産DVの問題は「連鎖」
多産DVを撲滅し、女性や子どもたちの住みやすい社会にするために必要な法制度とは何だろうか。
「先日の参院選で、各党は子育て支援策の充実を訴えていました。DVを受けた際に、母親と子どもが逃げやすいようにお金はあった方が良いですし、給付金の増額には賛成です。
ただ、子どものためのお金は間違いなく子どもの手に届き、DVから逃れてひとり親になっても子どもを育てていけるような制度にすべきです。世帯主の口座への入金はNGとし、子どもか妻名義の口座のみ登録可とするか、場合によっては子育てのためのサービスにのみ遣える商品券にするなど策を講じる必要があります」
多産DVが子どもに与える影響も深刻だ。
「多産DVを含めDVを近くで見聞きしてきた子どもには、危険などを察知する脳の扁桃体、聴覚とその認知をつかさどる聴覚野に変形が見られるという報告もあります。
DV加害者の暴言を想起させる大きな声や音でフラッシュバックを起こし、動揺したり、不安や苦痛を切り離すために不可解な言動をしたり、暴力をふるうこともあり、結果的に集団生活に適応できず、不登校になってしまことも少なくないのです。
脳や心に負った傷を放置すれば、社会に出ても仕事が長続きしないケースもあります。
多産DVで心を病んだ母親のケアラーだった女の子のなかには、自傷行為や家出、パパ活で居場所を探した子もいました。支配的な男性に惹かれた結果、妊娠・出産を繰り返す女性に接したこともあります。こうした連鎖は多産DVの見えない怖さでもあるのです」
連鎖を止めるために周囲ができることはあるのだろうか。
「多産DVに気づく機会を持ち、逃げるための選択肢を周囲が提示してあげることが必要です。産婦人科医や母子保健関係者はもちろん、周囲の大人も『望んだ妊娠なのかどうか』アンテナをはり、おかしい思った際は専門機関である配偶者暴力相談支援センターに相談するなどの選択肢を示してあげましょう。
子どもが親の多産DVに気づき恐怖を感じたときには、各自治体の児童相談所へ通報するのもひとつの手段です」
母と子ども一人一人が笑って暮らせるよう、多産DV家庭が減ることを願わずにはいられない。
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取材・文/山田千穂 集英社オンライン編集部ニュース班 サムネイル/Shutterstock