2人の子どものパスポートは夫が全て握っていた
在ハンガリー日本大使館と外務省は、1月29日に殺害されたA子さん(43)から2022年6月ごろと2024年8月の2回、相談を受けたと説明してきた。
1回目は「DVがあるような場合には警察に相談するのがいい」と伝え、2回目は子どものパスポート発給についての相談に対し「未成年者の旅券発給には共同親権者である元配偶者の同意が必要である」と伝えたと説明している。
これに対し友人らは、A子さんからは子どものパスポート発給を求め日本大使館に何度も電話をしたと聞いたと証言。最終的に2024年8月に大使館から「元夫の同意がないとダメ」と言われ、絶望した様子だったという。(♯2)
「彼女の2人の子どもはそれぞれ、両親の国籍国の日本とアイルランド、それに出生国であるブラジルの3つのパスポートを持っていましたが、それらはすべて離婚後にオランダに住んでいた元夫のD(43)が握り、子どもを日本へ連れて行くことは許さないとの態度でした。
そのためA子さんは大使館に子どものパスポートの再発給を求めたのですが、大使館は彼女の頭に銃を突きつけたり首を絞めたりしたDから同意を取ってこいと求めたのです。彼女は24年8月にもそう求められたのを機に大使館に見切りをつけ『もう違うステップで事を進めていきます』と伝えてきました」(A子さんの友人のBさん)
違うステップとは、日本の児童相談所のような機能を持つ公的機関、ガーディアンシップ・オーソリティー(GO)から、2人の子を連れ帰ってもよいとの承認を得ることだった。
今回の事件での大使館の対応を調べている鈴木庸介衆議院議員(立憲民主党)によると、A子さんは離婚に前後した2023年7月、女性の権利保護に取り組むNGO「パテント協会」に支援を求め、ここの協力を得て同年8月にGOに申し立てをしている。
「GOの承認があれば、親による国外への子の連れ去りに絡む紛争の解決を定めたハーグ条約上の問題をクリアし、国境を越えて子を連れ帰ることができるとされています」(鈴木議員)
GOの審理は予想以上に長引き、2024年8~9月になってようやくA子さんの望む決着が見通せるようになってきたという。
「子の日本への帰国に反対していたDは途中で『学校の夏休みや冬休みのたびに費用を全額A子さんが負担し、子どもを父親(D)の元へ連れてくること』などの条件をのむなら帰国を認めると言い出しました。おそらくA子さんにはのめないと高をくくっていたのでしょう。
しかしA子さんがこれを受け入れると表明し審理の方向がほぼ決まりました。これでDは焦り始め、A子さんのパソコンを盗むなど危険な行動に出るようになったのです」(Bさん)