「どうすればできる?」を議論するカルチャーへ

①技術面の研修を強化する
「提案のロールプレイング」や「資料作成のテンプレート」を導入し、実践的なスキルを身につけさせる

②「失敗しても責めない、改善すればOK」という文化を周知
「まずやってみることが重要。新しいことなんだから、失敗したって大丈夫だ」と伝え、心理的なプレッシャーを軽減する

③知識を補強する
過去の成功事例やベンチマーク企業の成功事例を共有し、「こうやればうまくいく」という具体例を増やす

この3つの施策を実行した結果、チームの消極的な雰囲気が徐々に改善していき、4ヶ月後にはプロジェクトの目標を達成することができた。

職場に必要なのは指示を出すリーダーではなく、「どうすればできる?」を議論するカルチャー。雰囲気を一変させる魔法のアンケート_2
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このアンケートによる要因分析を導入したあと、Hさんのチームでは、会議の際に「できない理由」を「このなかのどれですか?」と尋ね合うカルチャーが出来上がった。

部下たちは、「いまは技術が足りないかな」「実はそこまで不安はないんですけど、やり方がわからなくて」などと率直に現状を言い合うようになり、問題の本質にすぐ到達できるチームになった。

何か不具合があれば、まず「できない理由」を分析し、適切な対処法を考えるというカルチャーが根付いたチームでは、リーダーが細かく指示を出さなくても、部下たちだけで問題を特定し解決していけるようになる。

部下一人ひとりがどの要素で躓いているのかを自己分析し、必要なサポートを周囲に求められるようになるからだ。

この事例の成功ポイントは、「できない」の原因を4要素(感性・感情・知識・技術)に分解し、それぞれに適切なアプローチを探し当てる問題分析・解決手法をチームに内在化させたことだ。

リーダーが獲得した有益な思考プロセスや知識を積極的にチーム全体に共有することで、リーダーは言葉を減らしつつ、組織の成果を最大化することができる。

文/田尻望 写真はすべてイメージです/Shutterstock

無言のリーダーシップ 付加価値を生む仕組みのつくりかた
田尻 望
無言のリーダーシップ 付加価値を生む仕組みのつくりかた
2025/7/30
1,760円(税込)
240ページ
ISBN: 978-4815628833

リーダーに「言葉」は要らない

◎ベストセラー『付加価値のつくりかた』『再現性の塊』『「キーエンス思考」×ChatGPT時代の付加価値仕事術』の著者最新作。
◎キーエンス本の火付け役である著者が、指示しなくても自然と成果が上がる「キーエンス×田尻」式のマネジメント手法を一挙公開!

成果を出すリーダーの多くは、いくつかのミーティングを除けば、部下との会話はほぼゼロである。一方、成果を出せないリーダーの多くは、口頭指示や質問などの対応に追われ、自分の仕事は定時後や休日に片付けることになる。
もし、あなたが言葉を尽くさないとチームが成果を出せないのだとしたら、それは仕組みができていない証拠だ。
「無言」になれるかどうかは、単に「しゃべる」「しゃべらない」の話ではない。
最小の時間と資本で、どれだけの付加価値を生み出せるかというマネジメントの根幹を問うテーマなのである。
(はじめにより抜粋)

[目次]
はじめに リーダーに「言葉」は要らない
序章 ここから始まる「無言」の構築
第1章 準備編:信頼と合意を築くマインドセット
第2章 問題解決編:目標達成を阻む壁を取り除く
第3章 仕組み化編:成功をくり返す、失敗をくり返さない
第4章 付加価値編:仕組みから付加価値を生み出す
終章 リーダー不要の組織へ
おわりに リーダーシップが苦手だった私がたどり着いた答え

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