花江夏樹の印象に残っているセリフは?
これまで演じてきたなかで、印象に残っている炭治郎のセリフを聞くと、それは意外な一言だった。
「1番最初に思い浮かんだのが、『がんばれ炭治郎、がんばれ』という鼓屋敷編のシーンです。初めて読んだとき『すごい…こんなセリフ回しがあるんだ』と、驚きました。独特な表現で面白いなって」
吾峠(ごとうげ)先生の考えるセリフ回しは特別なものだと語る。日本語の使い方が綺麗で、なおかつユニークなんですよと目を輝かせた。そんななかで、炭治郎というキャラクターと自分が重なる部分について聞くと、こう答えた。
「極力、人には優しくありたいなとは思っていますし、その気持ちは炭治郎を演じてからより強くなりました。人を思う心の広さはすごく見習いたいです」
一方、炭治郎との違いを挙げるとすれば――。
「うーん、僕はあんなふうには頑張れないですね。もちろん環境も状況も違うので一概には言えませんが、あの胆力はちょっと真似できないなと思います」
本作では家族の絆や想い、人と人との結びつきが丁寧に描かれている。花江は、炭治郎を演じることで改めて家族の尊さに気づかされたという。
「赤ちゃんのころって本当に何もできない状態じゃないですか。でも親は毎日面倒を見てくれて、育ててくれた。それって無償の愛だと思うんですよ。
たとえば、僕は子どものころ、テニススクールに通っていて、家からすこし離れた場所だったんですけど、それでも毎週父親が送り迎えしてくれました」
自身の幼少時代を思い出しながら、父親への想いを温かい表情で振り返った。
「当時は、なんでこんなにやってくれるんだろう?と思っていたんですけど、いざ自分が親の立場になったときに、これって理屈じゃないんだな…ってわかったんです。子どもがその愛情をハッキリ理解していなくても、心のどこかではきっと感じ取っていると思いました」