「すこしでも皆さんに伝わったらいいな」
『鬼滅の刃』の根底に流れるテーマのひとつには、家族の繋がりがある。
「家族の繋がりは本当に深いものだと思うんです。その繋がりが引き裂かれたとき、人は何をどう感じるのか。家族の尊さや、後になって気づくありがたさ。『鬼滅の刃』はそういう部分も描いてると思うんですよね」
そして、花江はもう一つ心に残るセリフがあるという。霞柱・時透無一郎の父のセリフだ。
「刀鍛冶の里編で『人は自分ではない誰かのために信じられないような力を出せる生き物なんだよ』って、無一郎のお父さんが言ってたんです。その言葉がまさにその通りだなって感じていて。
人と人の想いの強さ、思いやりの素晴らしさ。それが作品を通じて、すこしでも皆さんに伝わったらいいなって。たとえ伝わらないにしても、何かを感じてもらえたら嬉しいですね」
炭治郎というキャラクターを通して、自分自身と向き合い、家族の愛や人との繋がりについて改めて考えさせられる。『鬼滅の刃』が多くの人の心に残り続ける理由が、花江夏樹の言葉からまっすぐと伝わった。
取材・文/桃沢もちこ 撮影/齋藤周造