将来の現実

「《将来の夢》とかマジでどうでもいいのわかります?」

「わかるわかる。もうわかったよ。将来にも現実と夢があるんだから。なるほどね、《将来の夢》ばっかり追いかけるからふわふわしてて、手が付かず路頭に迷っていたわけね。《将来の夢》はどうでもよくて、《将来の現実》はこのようになります! っていうことだったら簡単にノートに描けば示せるね。これはすごいことなんじゃないの、ジム?」

「でも一度やれば、なんでこんな当たり前のことが、って思いますよね?」

「確かに、未来だってやってくるのは毎日の24時間という現実だもんね」

著者の坂口恭平さん 写真/中村寛史
著者の坂口恭平さん 写真/中村寛史

「そうです。恭平も24時間の設定が完了しましたから、これからは作家になりたい、なんて馬鹿みたいなことを口走るのではなく、朝5時に起きて、そのまま朝9時まで原稿を書き続けたい、と言えばいいんです。そのために動けば必ず実現します。作家になるって、そういうことです。本を書いて、金を稼ぐことじゃありません。それは断じて違います」

「だってジムも『こち亀』に負けないくらい書き続けてきた作家だもんね」

「はいそうです。1円も稼いでませんがね。でも幸せなんです。私はやりたいことしかやっていないし、何一つ困っていないんですから」

「最高じゃんジム」

「きっとあなたもそうなりますよ。《将来の現実》のヴィジョンがはっきりしてますから」

「現実がはっきり見えてないのに、夢なんか見えるわけないもんね。将来の夢がわかんないっていう人、周りに多いんだよ。だから就職するんだって」

「間違いの始まりですね。《将来の現実》が見えていない以上、その仕事を上手く発展させることは、できないでしょう」

「彼らにも、将来の24時間で何をしているかを描いてみなよって、教えてあげたらいいんだね」

「そうです。自分が知っていること、助かったことを人に教えてあげると、さらに上手くいきます。《事務》は成長するんです」

「成長?」

書籍『生きのびるための事務 全講義』より
書籍『生きのびるための事務 全講義』より
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「はい。あなたが作品を作り続けていったら技術はきっと伸びるでしょう」

「確かに、きっとそうなるんだろうね」

「《事務》も同じです。継続することで、どんどん伸びていくんです。それこそ今の段階で描けなかった《将来の現実》まで描けるようになります」

「それこそ、《将来の夢》も!」

「もちろんです。《将来の夢》も侮ってはいけません。《将来の現実》が《現在の現実》にしっかりと根付いてきたら、次は《将来の夢》に向かっていくんです。《現実》と《夢》、この二つが揃ってこそ、我々の生きている人生です。そのためにもまずは《現実》を味方につけましょう」

生きのびるための事務
坂口恭平
生きのびるための事務 全講義
2025/6/12
1,650円(税込)
368ページ
ISBN: 978-4838775286

10万部突破のべストセラー漫画『生きのびるための事務』、ついに原作テキスト版が書籍化!

あなたに足りないのは、才能や能力や運ではなく、《事務》でした。
ピカソもやってた《夢》を《現実》にする具体的なヒントと方法を全11講で学べます。


書籍化にあたって新たに書き下ろされた「あとがき」や
坂口さん本人が描き下ろした多数の挿絵に加え、
巻末には坂口恭平さんと糸井重里さんによる5万文字にも及ぶ特別対談を収録。

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糸井 坂口恭平という人のことは、僕ももともと、うすうす知っている状態で。
坂口 あ、ほんとですか。
糸井 でも「この人は天才だから、会わないほうがいいな」と思ってたの。
-- 中略 --
坂口 僕自身やっぱり、糸井重里という人を参考にしているところが、たぶんあるんです。
糸井 ある……かもね(笑)
([特別講座 坂口恭平と糸井重里、はじめて会う]から抜粋)
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【スケジュール管理】【必要なお金の確認】【継続するコツ】、誰でもすぐにはじめられる実践的な《やり方》。
《夢》を《現実》にするために必要なのは才能や能力や運ではなく、《事務》でした。
必要なものはノートだけ。

【目次】
第1講 事務は「量」を整える
第2講 現実をノートに描く
第3講 未来の現実をノートに描く
第4講 事務の世界には失敗がありません
第5講 毎日楽しく続けられる事務的「やり方」を見つける
第6講 事務は「やり方」を考えて実践するためにある
第7講 事務とは「好きとは何か?」を考える装置でもある
第8講 事務を継続するための技術
第9講 事務とは自分の行動を言葉や数字に置き換えること
第10講 やりたいことを即決で実行するために事務がある
第11講 どうせ最後は上手くいく
あとがき
特別講座 坂口恭平と糸井重里、はじめて会う

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