次女・蘭子を演じる河合優実の凄さ

国民的アニメ・絵本『アンパンマン』の生みの親であるやなせたかしと、その妻・暢(のぶ)の夫婦をモデルに描く朝ドラ『あんぱん』。なかでもヒロイン・のぶの妹である次女・蘭子役を演じる河合優実の演技がたびたび話題となっている。

特に絶賛されたシーンの一つが、蘭子の婚約者である豪ちゃんが戦死した際、「“立派”に戦死したことを誇りに思うちゃらんと」と言うのぶに対し、「どこが、立派ながで…みんな嘘っぱちや!」と感情を爆発させた場面だ。

蘭子の中に渦巻く複雑な感情を、台詞の言い回しや目線の揺れ、細かな表情の動きで完璧に表現し、視聴者からも〈久しぶりにこんなに胸が締め付けられる演技を見た〉などの声が飛び交った。

これに対し、朝ドラ評論家の半澤則吉さんはこう語る。

「出世作『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』(NHK)や、『不適切にもほどがある!』(TBS系)ではあれだけ能弁に語るアクティブな役柄を演じつつ、今回は“自分を押し殺しつつ、存在感を放つ”蘭子という難役を自然にこなしていることに驚きました」(半澤氏、以下同)

さらに今作の脚本については、

「のぶという竹を割ったような分かりやすい性格のヒロインに対し、次女の蘭子は物静かであまり喋らないけど芯の強さを感じる。姉妹で陰と陽を分けて対比させる非常に戦略的な脚本だと感じます」

と分析。蘭子の視線一つで豪ちゃんへの恋心を描くなど、作品の序盤から次女・蘭子の物語が充分に展開されていた点も視聴者の心を掴んだ要因だという。

次女・蘭子を演じる河合優実(写真中央)
次女・蘭子を演じる河合優実(写真中央)