姉妹役で輝きを放った女優BEST1は?
BEST2:ヒロインとの演技バトルが話題に、『とと姉ちゃん』三女役・杉咲花
戦後、「暮しの手帖」を創刊した大橋鎭子をモデルに、ヒロイン・小橋常子を高畑充希が演じた2016年度前期『とと姉ちゃん』。その三女役・美子を務めたのが杉咲花だった。
「三姉妹とも子役から始まるドラマですが、美子の場合は第53回でやっと杉咲花にバトンタッチします。子役の幼い印象を引き継いだ杉咲花の登場はインパクトも強かった。実際の年齢より若い女学生役を見事に演じていました」
その中で高く評価したのが第56回。家訓を巡り、長女・常子と三女・美子が激しくぶつかるシーンだ。
「高畑充希VS杉咲花。今考えればとても豪華な演技合戦で、その対決はかなり迫力満点でした。この作品の三姉妹は、長女も次女も“超”がつくほどの優等生キャラで、少しダメ要素もある三女の美子がいることでバランスを保っていた点も、作品全体を楽しめた大きなポイントでした」
杉咲花は、『とと姉ちゃん』終了後、放映された映画『湯を沸かすほどの熱い愛』で各映画賞を総なめ。NHKでは2019年の大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』で主要キャストに、2020年度後期朝ドラ『おちょやん』でヒロインを演じるなど、国民的女優へと駆け上がっていった。
BEST1:『花子とアン』で悲劇のヒロインを担う、次女役・黒木華の熱演
現在、放送中の『あんぱん』でも脚本を務める中園ミホ氏の作品『花子とアン』(2014年度前期)。『赤毛のアン』の日本語翻訳を手掛けた翻訳家・村岡花子をモデルにした作品で、吉高由里子が演じるヒロイン・はなに対し、次女役の黒木華の熱演が目立った。
なかでも高く評価するのは第105~108回。郁弥(町田啓太)にカフェでの給仕中にプロポーズされたかよは、驚きと恥ずかしさのあまり店を飛び出す。しかし、その日は大正12年9月1日。郁弥は関東大震災で帰らぬ人となってしまった。
「激動の時代の中、激しい恋愛シーンもあり、ヒロインではなく、次女のかよに悲劇のヒロインを担わせた“三姉妹もの”作品でした。
黒木華の喪失感を隠せぬ演技があまりに辛くも、その繊細さと美しさの両方を感じる名場面でした。第108回では『おらをお嫁さんにしてくれちゃー』と長女・はなに向かって言いたくても言えなかった言葉を放ち、泣き崩れるシーンは圧巻でした」
黒木華は『花子とアン』の次女・かよ役を熱演後、『西郷どん』(2018年)や『光る君へ』(2024年)の大河ドラマ2作品にもキャストに抜擢され、いずれも大役を果たした。
半年間という放送クールを持つ朝ドラだからこそ描ける三姉妹それぞれの物語。朝ドラは女優たちにとって“ブレイクの場”であると同時に、新たな魅力を引き出し、次なるステージへと導く“新境地”の扉でもある。
取材・文/木下未希