「環境のせいにはしたくないし……できなくないですか?」
取材にあたって、彼女のXを一通りチェックした。憂鬱な気持ちや生活の苦しさにまつわる投稿が多い中、前を向く努力をする投稿があることに目を引かれる。
“若者支援に携わってみたい”
“自分と同じような境遇の子ども達を助ける仕事もしたいし起業もしたい”
「もうとっくの昔に全部が嫌になってたけど、大学生のときに『無理して生きることはないな』って終わらせようとしました。でも気がついたらまだ生きてた。生きるしかないって諦めがついたら、これからどう生きるかを突きつけられた感覚になりました」
それでもなぜ前を向く努力ができるのか、彼女に問う。
「社会に出て、『わたしはこんな過去があったから鬱病も激しく、自殺未遂もあり、だから相応の配慮をしてください』なんて言えないことはよくわかっています。生きるのならば、楽しいと感じることができるようになりたい。
環境のせいにはしたくないし……できなくないですか?」
1時間を超すインタビューの終盤で初めて質問に質問で返され驚く。これまでにない語気の鋭さがあった。何度も自分の中で繰り返されたであろう問いと、それに対する覚悟が滲んでいた。
香菜さんにはどれだけ自分の境遇が凄惨でも、それらを強みに変える強さがある。同じ境遇の若者たちに自らの手で祝福を作ろうとしている。
「生きていていい」「ここにいていい」という感覚を得ようと、得られる環境を自ら作ろうと、彼女は今日も必死に生きている。
取材・文/なっちゃの 写真/Shutterstock