中3で実父の子を妊娠
2002年、香菜さんは産声を上げた。しかし、その誕生は祝福を受けなかった。
「もうお兄ちゃんがいるから、あなたはいらなかったけど、私の慰めになるかなと思って」
物心がついたとき、母にこう言われたのを今でも鮮明に覚えているという。その言葉通り、香菜さんは兄の何倍も酷い虐待を受けることになる。
3歳のときには父の癇癪により左腕をつかまれ、引きずりまわされ、骨折をした。その光景から母は目を逸らし止めることはなかった。香菜さんの痛みと恐怖に支配された泣き声は、誰にも届かなかった。
「うちの最高権力者は父で、母もDV被害を受けていました。私が7歳のときから、母は父の暴力から逃げるように仕事で海外出張へ行きました。1カ月、長いと2年間行くようなことが何度もあって。捨てられたんです」(香菜さん、以下同)
彼女が9歳になると、父による性的虐待が始まった。週に一回ほど、父は彼女のベッドに入り、胸や下半身をまさぐるようになった。自らの意に沿わないことは暴力で押さえつける父に、抵抗が何の意味を持たないことを彼女はすでに知りすぎていた。
「最初に体を触られてから、1カ月経つかというとき、初めて本番を強要されました。逆らうともっとひどくなることはわかっていたので必死に声を殺し、寝たふりをしてやりすごしました」
まだ成長しきっていない体での父本位の性行為は、恐怖と嫌悪と激痛が全身を襲った。
「いつからか生理も始まり、『このままだと妊娠する』と思うと不安で堪りませんでした。そして中学3年生のとき、つわりのような症状があって検査をしたら妊娠がわかりました。
1人じゃ抱えきれなくて、父への恨みとショックと恐怖と全部がごちゃごちゃになりました。どうしようもなくなり、父に泣きながら妊娠したことを伝えました」
海外へ赴任中だった母は、娘の妊娠も中絶も知らない。